さとみにとってはまさに「今」この瞬間が映画のワンシーンのようだ。やばい。沼にハマりそうだ。いけない、理性を保たなくては。でもキスくらいまでなら……そんな考えが頭の中を忙しく駆け巡る。
「お金を渡されるような情けない男ですが…」
それを聞いて響子の言葉を思い出した。
「『もうお金はあげられない』って試しに言ってみて」
そうだ、ここできちんとはっきりさせておこう。
「不躾なことをしたと反省しました。プライドを傷つけてしまってごめんなさい。もうあんなことはしません」
あの日から、光輝はカフェに現れなくなった。やはりお金目当てだったのか。そうだとしたら手のひらで転がすつもりが、転がされていたことになる。頭を搔きむしるほど情けない。
響子に話せば「言った通りだったでしょ」とまた笑われると思っていたが、返ってきた言葉は意外だった。
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