「既婚者のあんたに恋し過ぎちゃって、辛くなったから消えたのかもよ。映画を観るより高くはついただろうけど、4万で主演女優を体験できたと思えばいいんじゃない? 泥沼になる前に良いタイミングで消えてくれたと思うよ。しかも体重がこの1ヶ月で3キロも減ったって? そんなおまけまでついて来てさ(笑)」
そして最後にこう言った。
「ぽんぽん万札を気軽に人に寄付できるご身分が羨ましいわ。さとみは幸せだね。私は毎日強い女を演じることに疲れてきたよ」
冗談なのか本気なのか分からない響子のつぶやきにハッとした。
いつも妬みに近い気持ちで響子を見てきたが、彼女は何もせずに格好良くて綺麗な女になったわけではない。響子は大きなエネルギーを使って日々頑張っているのだ。
人は自分が選ばなかった道を空想し、勝手に後悔することがある。しかし結局は何を選択しても幸せは自分の心が作るものなのかもしれない。
恋愛映画の主役の疑似体験を4万円で買ったなんて、少し無理のある面白い考え方だが、響子のおかげでさっきまで胸にあったモヤモヤはすっかりなくなっていた。
Text:女の事件簿調査チーム
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