そう言いながら彼は俯く。
「冗談でも嬉しいです」
そう言って微笑みながら、さとみは自分の財布から一万円札を取り出し彼のテーブルに置いた。
「どうぞ。もしまた会うことがあれば返してください」
そう言って席を立った。
背中に彼の視線を感じながら、さとみは確信していた。彼はまたあのカフェに必ず来る、私に会いに。
翌週、やはり彼はカフェに来た。来て早々に彼はさとみに謝罪した。
今日は借りたお金を返すことができないと言う。返済するつもりでいた一万円を、借金をしていた友人に見つかり徴収されてしまったらしい。
「そんな顔しないでください」
申し訳なさそうに突っ立ったままの彼に、隣に座るよう促した。
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