「そんなんじゃないから!」
そう否定しながらも、一抹の不安がよぎった。
「なら『もうお金はあげられない』って試しに言ってみてごらん。その子が天使なのかそれともペテン師なのか……きっとわかるから」
翌週、彼はカフェに入らず外でさとみを待っていた。
「良かったら散歩をしませんか」
散歩に誘っておきながら光輝はひと言も発さない。
「どうしたの?」
さとみが問うと、光輝は遠慮がちにそっと手を握ってきた。さとみは不意打ちの出来事に全身の力が抜けそうになった。
「初めてさとみさんを見た瞬間、映画のワンシーンを見ているようでした。いつも想像してしまうんです。丸一日、あなたと一緒にいれたらどんなに幸せだろうって。あなたが結婚しているのは分かっていますが気持ちを抑えられません」
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