彼の名は光輝。21歳だという。俳優になるのが夢で、一応事務所に所属しているらしい。レッスンを受けながらいつ入るか分からないオーディションに備えつつバイトをしているが、生活は厳しく友人に借金をすることも多いらしい。けれど何度もオーディションを受けては落ちての繰り返しで、来月のレッスン料も払えないため地元に帰ろうかと悩んでいるのだという。
さとみは静かに話を聞きながら、何の保険もなく人生をかけて夢を追いかける彼を心底応援したい気持ちになった。
「少しだけど良かったらあなたの未来に投資させてください。諦めないで」
そう言ってさとみは財布から三万を取り出し光輝に渡した。
光輝は頑なに受け取ろうとはしなかったが、さとみはそのままお金を置き、娘を迎えに行くため席を立った。
「それってママ活じゃない」
親友の響子に話すと笑いながらさとみをバカにした。
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