世間体を気にしながら育てられたことの影響も大きいと感じている、と雅美は言う。
「私そのものじゃなくて、お勉強のできる雅美、お行儀が良くて褒められる雅美、進学校に入れた雅美、医者と結婚した雅美……我が家では、そんな条件つきの私しか愛してもらえないんです。私としては足りなかったんでしょうね、何かが。言うとおりにしないと愛してもらえない、っていう思考になってた、たぶん」
雅美は、今のままの生活を続けていてはダメだと考えている。
「誰かに無償の愛を傾けることができたら、変われるのかなあなんてぼんやり考えています。いつか、子どもを産んでみたいなって。
それとは関係ないけど、今バイトしているバーのマスターが、とても魅力的な方なんです。話していて楽しいし……いろんな方の悩みをいい距離感で聞いてあげられる大人の男性です。
うっかり寝てみたいと思ったり思われたりしないように気をつけながら、マスターと信頼関係を築くことが目標。そうやって、少しずつ何かに強く依存しない自分になれたらと思っています」
最後に雅美が見せたほほ笑みに癒された。過去に深い傷を負っても、泣きながらでも、自分と向き合って日々を生きる彼女を、心から応援したい気持ちになった。
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