相手を気遣っている様子の康太に対してさらに怒りが増す。何度もしつこく電話するように言われて、あきらめた康太は相手に電話をかけた。
「もしもし、あ、ごめんね。あのさ、もう会わないし電話もしてこないで」と康太が早口に言うと、
「……はい、わかりました。わざわざありがとうございました」
スピーカー越しに緊張した相手の女の声が聞こえる。周りに家族がいるのだろう、言葉を選んで返答しているようだった。
康太は反省して麻央に何度も謝ったが、このあとしばらくギクシャクした日々を送った。荒れた気持ちはいずれ時間が解決してくれるのではないかと思っていたが難しく、結局二人は離婚することになった。
©︎gettyimages
離婚が決まってからも新居が決まるまではしばらく家庭内別居をしていたが、このころから麻央のなかでは怒りの感情がさらに増えていった。夫婦関係が崩れたのは二人の問題だが、夫をそそのかした浮気相手の女が許せない——。
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