麻央は見て見ぬふりはできない性格なので、ヘアゴムを見つけた翌日に康太と話す時間を作った。「話がある」と事前に言うと、頭の回転の早い康太は何か言い訳を考えてきそうだと思ったので、夕飯を終えるまではいつもどおりにこやかに過ごしていた。
「ねぇ。これなに?」
くつろいでいた康太にヘアゴムを見せながら聞く。あきらかに動揺した康太にさらに追い打ちをかける。
「悪いけど昨日、康太のスマホも見た。浮気してたんだね」
©︎gettyimages
昨夜のうちに康太のスマホをチェックしていた麻央は、浮気のやりとりがわかるいくつものメッセージを見つけて、その画面を撮影していた。康太はどう言い訳しようか迷っていたようだが、最終的には「ごめん……」と認めた。
「誰なの? なんでわざと持ち物とか入れてくるの? 相手の女バカなの?」
麻央はいらだちを隠せずに詰め寄る。康太の話では、高校時代(麻央と出会う前)に仲が良かったグループの女性だそうで、相手の女性もなんと既婚者らしい。いわゆるダブル不倫で、しかも相手側の家庭には小学生の娘がいる。
子どもが欲しいのになかなか授からなかった麻央にとって、相手の女性の行動は許せないものだった。
自分は子どももいて夫もいて幸せなはずなのに、なんでわざわざうちの旦那に手を出すの? 麻央は泣き叫びながら康太を責めた。
「いまこの場でその女に電話して、もう会わないって目の前で言って」
「今は無理だよ……。明日言っておくから」
「は? そんなの信じられない。っていうか、なんで無理なの? 夜は相手も家族といるから?」
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