「彼に恨みはありません。でも、あの女のことは許せない。私の家庭を壊した罪はかならず償ってもらいます」
そう語る麻央。彼女の復讐は始まったばかりだ……。
※この記事は取材を元に構成しておりますが、個人のプライバシーに配慮し、一部内容を変更しております。あらかじめご了承ください。
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先日引っ越したばかりの佐田麻央(仮名・27歳)が、部屋で段ボールの片付けをしていると、インターフォンが鳴った。宅配便とのことで、マンションのオートロックを開ける。しばらくして再び部屋のチャイムが鳴る——。

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「タナカ運輸(仮称)です。佐田さんのお宅でよろしいですか?」
「はい、そうです。先週引っ越してきたんです」
そう伝えて大きな荷物を受け取る。
「ここのエリアを担当しています和久本(わくもと)です。なにかあればお声掛けくださいね!」
30代後半くらいのガタイのよい男性配達員は、笑顔で麻央にそう伝えた。
「ありがとうございます。『わくもとさん』って珍しい苗字ですね。もう覚えました(笑)。しばらくの間、引っ越し関係の荷物とかがちょくちょく届くと思うので、よろしくお願いします」
「承知しました。ありがとうございます」
再びあいさつをして配達員は急ぎ足で去って行く。
先日まで戸建てに住んでいた麻央は、離婚をきっかけに1LDKのマンションに引っ越した。離婚後も生活エリアは変えたくなかったので、元の家から徒歩20分くらいのマンションで新生活を始めることにしたのだ。
麻央と元夫の康太(仮名・30歳)とは、もともと仲の良い夫婦だった。だが、二人の間にすれ違いができたのは、夫婦になってから1年ほど経過した頃、周囲の友人たちから妊娠・出産の報告をたびたび聞き、麻央は自分だけおいて行かれている気持ちを感じるようになってからだった。
夫婦の営みは比較的多いほうだったし、子どもが欲しいと望んでいたのだがなかなか恵まれない。麻央にとっては日に日にこの事実が大きな悩みとなり、純粋な気持ちでセックスを楽しめなくなっていた。

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不妊が原因ではないかと、何度か話し合いをし、やっと二人で相談にも行ったが、決定的な理由は分からなかった。
年齢的にもまだ多少の余裕はあったので、当面はしっかりタイミングを見ながら行うよう医者にも勧められたが、麻央の気持ちは晴れなかった。二人とも自分の仕事が好きでやりがいも感じていたので、忙しい日々を過ごしながらゆるい不妊治療を続けていた。
そんな中で、康太の2回目の浮気が発覚した。それは不妊外来に行ってから半年ほどした頃。彼の仕事用のカバンの中に女性用のヘアゴムを見つけたのだ。
一度ならず二度までも……。しかもこのタイミングで……。
ここから麻央の復讐心が芽生えていく。
Text:女の事件簿調査チーム