「さあ、話を聞かせてもらうよ」
屈託なく笑う飯田の顔を真正面から初めて見た由依は、飯田の目尻に笑いジワがあることに気がついた。この人、こんなに屈託なく笑うんだ。会社員の人って、オフィスで見る時と外で見る時では違う人に見えるな、などと思った。
由依は酒の勢いを借りながら、少しずつ、たどたどしく、今までの経緯を飯田に話した。
元々はネイリストで、オフィスワークは初めての世界であること。孤立した原因は自分にあったとしても、自分に悪気はなかったこと、でも会社にはルールがあるようだということ、女子トイレの化粧直しスペースではいつも譲ってもらえないこと、社内の人にランチに誘われたことがないこと、いつもはひとりで公園で昼休みを過ごしていること——。
どんな些細な話にも、飯田はうんうんと頷いてくれる。ひとつずつ、肯定をしてくれる。
由依は初めて自分のことをわかってくれる、味方ができたようで嬉しくてたまらなかった。
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