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LIFESTYLE

【ドクトルの書生が行く英蘭客船の旅】vol.3
腹ペコで臨むのが鉄則。クイーン・エリザベスのアフタヌーン・ティーが教えてくれた、本当の豊かさとは?

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船上でイギリスの伝統を体験! ラグジュアリーなアフタヌーン・ティーの時間

この日のランチはスキップ。なぜなら非常に人気があるクイーン・エリザベスのアフタヌーン・ティーへ繰り出すからです。もちろん、第1回でご紹介したリド・レストランでごく軽くは食べていますが、アフタヌーン・ティーは腹ペコで臨むのが鉄則。イギリスといえば多くの人が思い浮かべるこの文化、1日2食制が普通だった19世紀に始まり、上流階級から労働者階級まで幅広く普及しました。日本では3段重ねのティースタンドに整然と盛り付けられたサンドウィッチやスコーンを優雅に楽しむという上流階級的で女性が楽しむものというイメージが定着していますが、本国では豪華なものから素朴なものまで様々、もちろん男性も楽しめるものなのです。

クイーン・エリザベスの船内にいくつかある会場のひとつ、クイーンズ・ルームでサーヴされるアフタヌーン・ティーではティースタンドを使用せず、サンドウィッチ、スコーン、ペイストリーの順に(アフタヌーン・ティーのマナーではこの順に食します)ワンプレートごとテーブルに運ばれます。なかでもスコーンはアフタヌーン・ティーの要。形、大きさ、食感など、地域や家庭によって大きな差が出る食べ物で、理想のスコーンを追い求め、様々なホテルやティールームを渡り歩く人もいるくらいです(私も似たようなものでした)。

さて、キュナード・ライン特製のスコーンはどうでしょう。焼き立てで温かく、手のひらにちょうど収まるくらいのやや大きめのスコーンでカントリー風。スコーンの正しい食べ方に習い、真ん中(狼の口と呼ばれる割れ目)から上下に割ります。お次はクロテッドクリームをこれでもかと塗りたくります。ちなみにイギリス人はクロテッドクリームが少ないと怒ります。そしてストロベリージャムをその上からやはり豪快に盛れば、レディトゥゴーです。

なんと、クロテッドクリームが先かジャムが先かという決着のつかない議論がイギリスには存在します。肝心の味はどうでしょうか? しっとりとした食感はロンドンの老舗ホテル「リッツ」で食べたものを思い出させ、生地の柔らかさがクロテッドクリームの質感ともよく合い絶品、まさに気絶です。

給仕をするスタッフの手元、白のグローブを着けているのがおわかりいただけるでしょうか。こちらは前回ご紹介した、ホワイト・スター・サービスの1つです。スコーン用のジャムはイギリスの名門チップトリー(TIPTREE)のもので、ここのマーマレードはドクトルのお気に入りでもあります。

スコーンを食べていると口の中が乾き、ジャムの甘みが重くなってくるものです。そうなると自然にティーに手が伸びます。アフタヌーン・ティー用にブレンドされたキュナード・ラインのオリジナルティーは口内に入った瞬間、ジャムやクリームを拾って新たな極上の飲み物へと変化します。ついつい、おかわりもしてしまいました。

アフタヌーン・ティーは基本的におかわり自由で、先ほどはプレーンでしたが2回戦はレーズン入りを。こちらもやはり最高に美味しい。スコーンの後はペイストリーとしてケーキですが、スコーンの衝撃が強すぎたので小さなレモンドリズルケーキ(レモン味のスポンジにアイシングシュガーが載ったケーキ)のみを。

香り高いキュナード・ブレンドティーは午後用にブレンドされた軽めの紅茶、とても飲みやすく、カップの底がすぐに顔を覗かせます。“Each cup of tea represents an imaginary voyage(一杯の紅茶が私を想像の航海へ連れていってくれる)”とはイギリスでたいへんよく知られた名言ですが、船上のアフタヌーン・ティーはさらに説得力を増します。

その昔、インドやセイロン、遠くは中国から海路でイギリスへ渡ってきたお茶。文化交流や貿易の歴史には大きく船が関わっていたことを思い出させてくれます。今、自分が飲んでいるこのお茶の葉はどのようなところから来たのだろうか、どのような人が育てたのだろうか、また、自分はどこから来て、これからどこへ行くのだろうか、と。東京での普段の生活では考えもしないようなことを考えている自分、まさに想像の航海へ出た水夫のような自分に驚くのでした。

時間の短縮や効率的であることが第一とされる時代の中では、想像力や時間をかけて思索に耽る時間を失いがちです。ですがそれらこそ、本当に人生を豊かにしてくれるものなのかもしれないと、このささやかなお茶の時間は教えてくれたのでした。



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