「キリコさんとは、月に2、3度逢う仲になりました。彼女はお酒を呑まないので、食事をしてからホテルに行くというパターンが多かったでしょうか。看護師という私の職業柄、夫には『夜勤』と偽る場合もありましたが、夫はさして気にする様子もなかったですね。
私としては、いまだに『いい歳して、なに色ボケしてんだよ。バーカ!』というセリフが、脳裏に刻まれていましたから、これ以上傷つきたくない思いから夫との接触は、極力避けていました。その分、キリコさんへの愛情は深まるばかりです。
彼女もレズビアンが初めてだという私を、『家に帰したくない』と言ってくれて……ある日、私はとんでもないことを思いついたんです」
とんでもないこととは何だろう?
「片時も離れたくない思いから、夫と住むマンションに、キリコさんを泊めることにしたんです」
後編に続く。
Text:作家 蒼井凜花
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