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「オトコだらけの白鳥の湖もあり得る?」バレエ界のLGBTQ。当事者が悩む「表現と人権のはざま」

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バレエ界のLGBTは、一般的な社会のLGBTとはやや様相が違う。映画「リトルダンサー」で描かれたのは、バレエダンサーを志す男の子とLGBTQの子どもが「マイノリティ」同士として心を通わせる姿であったが、実際の所はどうなのであろうか。

6月16日、参議院本会議で「LGBT理解増進法」が可決、成立した。

この法律はあくまでも「LGBTの方々への理解を深めよう」というものであるが、この「理解」と言うことが一番、日本社会にとっては難しいのではないかと久美子さんは考えている。

「特別に理解することが必要だという法案なんかができている時点で、LGBTQというもののことを分かっていないんじゃないかって不安になります。

だって、特別なものとして権利を認められるように理解しなさいってことでしょう? 私は、LGBTQの人も他の人と同様に基本的な権利があるということでいいと思うのですが……」

そう言って首をかしげる久美子さん(仮名・32歳)は、高校生の頃からヨーロッパのバレエ学校に留学し、コロナが流行するまではずっとヨーロッパ各地のバレエ団に所属しながら踊り続けてきた。

ヨーロッパではLGBTQの存在が当然のように受け入れられていることが多いので、彼女には、日本で起きている問題の多くがあまり理解できないようだ。

LGBTQの方々の権利を優先することで、たとえば女性が危険にさらされるような状況が想定できるという専門家などがいるんですよと言った話をお伝えすると、目を丸くして「そういうのってお互いの思いやりがあれば解決しませんか?」と言われてしまった。

日本ではこのたび成立した法案に法的拘束力はあまりないことに不安感を抱く人もいるというのに、彼女にはそういう日本の状況がよく飲み込めないようだ。

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©️gettyimages

「物事の捉え方によると思いますが、LGBTQの特に男性に生まれているのに自分の性認識が「女性」というパターンの方々やいわゆる『ゲイ』と言われる方々は、バレエ界では結構多いし、そういう方に才能のある人が多いというような見方をする人もいます」

そう話す久美子さんの周りには、ゲイやレズ、女装家もいればトランスジェンダーという人たちもいる。

「LGBTQなんて一言ではまとめられないんじゃないかなあと思っています。『ゲイ』といってもみんなタイプが違うし、志向の加減や物事の捉え方も全然違う。海外生活が長いからかもしませんが、私は、彼らのそういう自分の性自認や性的指向を『LGBTQ』かどうかではなく、『それぞれの性格』だと考えています」

都内で後進の指導にあたる、健次郎さん(45)は次のように語る。

「海外では、男性ダンサーが女性ダンサーと同じようにチュチュと呼ばれる衣装を着けて、女性と同じものを踊っているというケースも最近多い。SNSなどにもそういう動画は結構多くて、しかも男性ダンサーが女性ダンサーよりも柔らかく女性的に踊っていたりもする。

だから、『役柄』さえ成立させられるのであれば、その役柄を女性が踊ろうと男性が踊ろうと問題ないのではないかな……と思います。

ただ、その行き過ぎたジェンダー意識というか、バレエを知らない人による『バレエの役柄そのものがLGBTQへの迫害だ』というような主張はナンセンスだと思いますね。

長年続いてきた『クラシック』というものの良さや美点を全く意識していない。コンテンポラリーなものとして、男性ばかりの『白鳥の湖』なんてものを上演するのは問題ないと思いますが、クラシカルなものを変えてしまうべきじゃない」

バレエ界でのLGBTQ当事者たちを取り巻く現状とは——。後編ではさらに深く掘り下げていく。

▶︎後編に続く


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