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「多様性社会」とはすなわち「ザ・ガマン」の世界。トランスジェンダーの「トイレ」問題アナタはどう考える?

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

今度はトイレですか……

先週、「ジャーナリストの津田大介さんがトイレで燃えている」という情報が飛び込んできて、まさかそんなワケねぇだろ、と見に行ったら本当にトイレ「ネタ」で炎上していました。コトの発端は、

「トランスジェンダーに対し社会はどう向き合うべきか」

を弁護士さんが説くネットの記事。津田さんはこの記事を「みんな読んで」と紹介しただけなんですが、実はその記事に書かれていた「向き合い方」が正直かなりブっ飛んでおり……たとえば、

・男女別トイレは、自認する性で選んで使って良い。企業はそれに異を唱える女性社員に研修を。納得しなければ面談を。
・トランス女性を怖がる女性はデマによる誤解の被害者なのでケアを。
・女性のフリをした偽トランス女性は、警察が成育歴・通院歴を調べ、家族に聞き取りすれば良い

……うーん、凄い。どっちのトイレを使うかなんて、これから世間が議論することだし、異を唱える女性に研修・面談って、つまりは異論を認めないってことですよね。それ、マイルドな思想矯正なのでは。

あと女性たちが本当に怖がっているのは、女湯や女子トイレのトランス女性より、むしろ「女湯にトランス女性がいたら怖い」と正直に言っただけの女優 橋本愛さんを激しくバッシングし、謝罪に追い込むような連中でしょう。それに対して「ケア」って、さすがにちょっと的外れだし、向き合う方向が違うと思います。

そして何より「警察が~」のくだり、個人的にはココが一番強烈でした。国家権力によるトランスジェンダー認定って、ディストピアですかね。家族にも言えずに生きてきた人や、自分の意思で通院していない人も大勢いるのに、そういう人たちはどうすれば良いの? 地下に潜って反政府運動でもするんでしょうか。

この話、立場を入れ替えて「女子トイレに入りたがるトランス女性には研修を。納得しなければ面談を」なんて言ったら、たぶんこの弁護士さんブチ切れると思うんですよね。まあこういった先鋭的な考え方って、必ずしもLGBT全体の総意ではないと思うし、でも受け止め方を誤ると修復不能な分断すら生みかねないので、そこは注意しましょう。

2万回くらい書きましたが

そもそもこの記事は有料ページで、正直そこまで話題になっていなかったんですが、記事と直接関係のない津田さんがコメントし、注目を集め、津田さんもろとも炎上してしまった感じが、いかにも津田さんっぽいと思いました。

すでにこの連載でも2万回くらい書きましたが、「多様性社会」とは互いの違いを認め合うバラ色の日々、ではありません。苦手なもの、受け入れられないモノでも、その存在は認めて許容する「ザ・ガマン」の世界。

そしてそのガマンは一方通行では無く、お互いにガマンすることで初めて成立するのです。「私の考える多様性は素晴らしい!社会は許容すべき!異論は認めない」なんていうワガママは通用しないのです。そういうの、ホント妙な分断を生むからやめて欲しい。

ちなみに「性的マイノリティー」ってLGBTだけじゃないですからね。ラバースーツとか切腹専とかケモナーとか……知ってますか? あ、知らないですか。調べなくていいです。単なる趣味ではなく、幼少期から本当に「ソレ」じゃないとダメ、それ以外にはまったく興味を持てない、という方々は本当にいますからね。

もし「保険適用を求める切腹専」による傷だらけデモとか、「社会の認知を求めるラバースーツ」の決起集会が開催されたら、その都度、当事者にしっかり向き合い議論する必要があるということです。多様性を認め、等しく尊重するというのは、そういうことなのです。

声のデカい人、暴れた人が勝つだけのやり方では、誰も幸せになれません。


※文中の誤表記を修正(トランス男性→トランス女性)しました。ご指摘くださった方々、ありがとうございました。


Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)
※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。



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