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LIFESTYLE

【後編】リアル・リトルダンサーの世界。バレエ界のLGBTQ。当事者が語る「意外な実態」

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久美子さんがふんわりと笑う横で、うんうんと頷いているのはいわゆる『LGBTQ』の『Q』にあたると自分自身を認識しているケントさん(仮名・24歳)だ。

ちなみに『Q』というのは「Questioning(自分の性自認や性的指向が定まっていない人や、あえて定めていない人)」の頭文字にあたる。

「僕は自分自身を誰かにカテゴライズされたくないんです。アメリカと日本のハーフですけど、何人だとかハーフだとかいうレッテルも貼られたくない。無性別の何にも属さないダンサーでありたいので」

ケントさんの柔らかい言葉遣いの中に、彼の固い決意がうかがえる。

「エイズで亡くなったルドルフ・ヌレエフなんて、何もかもを超越していて誰も彼の性的嗜好をとやかく言う人はいなかった。まあ、彼があそこまで極めるまでの間には、いくらかは言われたでしょうけど……」

目をキラキラさせてスーパーダンサーについて語るケントさんの横で久美子さんが、

「日本にはあまりない感覚なのかもしれませんけど、海外ではボーダーレスな方々の方が芸術的な才能に長けているというような発想がある気がします。既存の枠組みにとらわれていないというかなんというか。結構デザイナーの方とかにも、多いでしょ?」

と話す。するとケントさんが

「僕は久美子の『日本人って……』っていう考え方もあんまり好きじゃないよ。人種にとらわれすぎている。何にもとらわれない考え方をしてほしいのに。久美子はとらわれていないようで、とらわれているよ」

と久美子さんの言葉を遮る。

「そういうケントだってとらわれてはいるでしょ?『ハーフだって言われたくない』っていつも言うけど、『言われたくない』と思うこと自体が、その事実にとらわれていることになるのではないかしら?」

久美子さんも負けじと言い返す。

一見けんかのようなこのやりとりは、彼らに言わせると「議論」や「ディベート」だそうだ。

よく考えれば彼らのように、LGBTQについて議論を交わすことすらもなんとなくタブーのように思っている人が日本には多い気がするが、こういう考えを持ってしまう時点で、筆者自身もまた、久美子さんやケントさんにいわせれば「とらわれている」ということになるのだろう。



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