「じゃあ、また会ってくれるんですね!って。それだけでいいんですと。もしかしたら彼が私に対して感じていたのは、恋ではなくて愛だったのかもしれない。家族愛的な?」
しかし、成人した男と女である。2人は徐々に距離を近づけていった。
「物理的にというよりは、精神的にですね。お互いに本当にいろんなことを話します。アートの話とか、仕事の話はもちろん、自分の内面にある人には言えない気持ちとかこれまであった辛い過去のこととか、漠然とした不安とか…。夫にも娘にも話せないことも彼になら話せるんです。彼もたぶん同じ気持ちなんじゃないかな。カラダの関係がなくてもここまでどっぷり浸かれるというか、ハマってしまうことに驚いています」
美術館の喫茶店で見つめ合い、愛おしそうに話をする2人は側から見たらカップルに見えることだろう。
「そうかもしれませんね。実際、触れたい、キスしたい、抱き合いたいって思ってますから。それをぐっと我慢していることもいいのかもしれない。想像するだけでなんていうのかな、興奮しちゃう。最近はそういう話もするんですよ。カラダの関係になったら、どうなるかな? って。でもなりません。恋愛になって彼を失ったら、私、それこそ精神を壊してしまいそうだから」
彼との時間を過ごすようになって、灯里は夫とは、薄っぺらな会話しかしていないことに気がついたという。
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