【後編】工事費の裏引きで脱税三昧…クライアントを横取りした不正社員を依願退職させた方法

最初に、３名のリーダー格である、矢部を取材室に呼ぶ。 　
矢部は常時笑顔で、思っていたよりもずっと饒舌だった。仕事に関する事はもちろん、家族や趣味、どんな質問に対しても、楽しくてたまらないといった様子で話した。特に自分の娘の話になると、とろけそうな笑顔を見せた。

「M建設に就職出来て、本当に感謝しています」

そう言った彼の様子からは、悪びれた様子を微塵も感じさせなかった。

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２番手である加藤は、普段無口で、取材には少し苦労するかもしれないと伝えられていた。しかし緊張していたのは最初だけで、徐々に口が滑らかになり、仕事へのやりがい、幼い頃の夢などを頬を高揚させながら嬉しそうに話した。

１番の年配者である杉元は、M建設での仕事が、どのように人と社会のためになっているかを熱弁した。また３人の中では最年長であるが、電気工事士の資格のない自分は、一番下っ端のつもりで喜んで矢部と加藤の補助をしている、と誇らしそうに話した。　

結果、我々は問題なく矢部・加藤・杉元の３名に、依願退職契約を結ばせる事を成功させた。