自分の生活が、見ず知らずの何者かに脅かされているとしたら……?
「鍵をかけて外出したにもかかわらず、いつの間にか、部屋の中の物がうごかされている……」
「ある日を境に、街ですれ違う人間がすべて、自分を敵視するようになる……」
「マンション全体が、得体の知らぬ団体組織で自分を監視している……」
これは、被害例のほんの一部に過ぎないが、このような「集団ストーカー被害」に苦しむ相談が、後を絶たない。
海外から一時帰国したある女性は、歩道で自転車に衝突され、足に怪我を負った。自転車でぶつかってきた少年が逃げ去ったため、彼女は警察に通報した。 相手側の少年の家族とは、顧問弁護士を通して示談を提案されたが、その条件を彼女がなかなか受け入れず、暫く揉めた。
その事故きっかけに、彼女の身に不可解なことが起こり始めたという。
彼女は事故で負った怪我の治療のために、自宅近くの病院に通院することになったのだが、その病院で虚偽の診断をされたという。
実際は骨が折れているにも関わらず「捻挫」という診断を受けたのだ。女性は診断に疑問を抱き、ある大学病院でセカンドオピニオンを受けたところ「骨折」していると判った。
「自転車に乗っていた少年の父親が、ある大学病院の医師で、地元の権力者だったんです」
彼女が不可解に思い調べたところ、誤診した病院の院長が、自転車でぶつかって来た少年の父親のいる大学病院の出身だと知った。
「父親が手を回したんです」
彼女はそう言った。
ギブスが外れた後も足の痛みが残り、ある地元のペインクリニックに通ったが、そこでは、スタッフの態度が明らかに異様だったという。
整体師は、施術をしながら、彼女のことを探るような質問を繰り返し、それ以外のスタッフも、彼女を見ながら、いつも何かひそひそ話しているという。
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更に、地元での彼女への嫌がらせは病院だけにとどまらず、道ですれ違う人物のほとんどが、少年の父親の息がかかった人物で、常に自分の行動を監視するようになったらしい。
犬の散歩をする初老の夫婦、ベビーカーを引く若い母親等、彼女とすれ違う全ての人間が、彼女を見張っていて、すれ違った後は、必ず携帯電話でどこかに連絡しているというのだ。
彼女は警察にも相談したが、少年の父親の息が警察まで及んでおり、相手にしてもらえなかったという。
その後は、彼女のメールや電話も監視され始め、その嫌がらせは国家規模となり、彼女のビザの申請までも阻むようになった。 それからも、彼女への嫌がらせはエスカレートし、どういう経緯なのか、今では世界規模にまで広がり、ある国から攻撃を受けているという。
一方、医師をしているある女性は、父親が亡くなった後から「集団ストーカーの被害」に会うようになったという。
「犯人グループは、おそらく遺産相続でもめた親戚の1人が雇ったのだと思います」
彼女の留守中には、必ず家にあるものが動かされていたり、少し汚されていたりする。ある時は、キッチンの味噌が少し使われていたという。
しかし、彼女の家の全ての出入口に防犯カメラを設置しても、何故か、犯人の姿は絶対に映らないのだ。
彼女への嫌がらせは次第にエスカレートしていく。果たして“見えざる犯人”の正体を掴むことはできるのか——。後編に続く。
TEXT:探偵 こころたまき