ごめんね、という自分の声の残響がいつまでも耳に残って消えなかったと千春は言う。
実家の母親は、もともと弱い子だったんだろうから気にするなとか、どのくらい時間をおけばまた子どもを作れるのか、などとデリカシーのないことを言ってきた。
「そうなんです。母がそうだったように、赤ちゃんはまたできるはずだから流産の落ち込みは一時的なものなのだろうと思うんでしょうか。流産経験のない人は、本当に悪気なく、当事者にとってはつらい一言を投げてくることもあります。」
職場の先輩からは
「これだから妊娠は怖いよね。妊娠できたとしてもこれがあるから安心できない。」と言われたという。
「先輩はこう続けました。あなたは妊娠できることは証明できた。次に向かってがんばれるんだから落ち込まなくてもいいと。さらに、不妊症不育症の人の苦しみに比べればまだマシよという言葉もかけられましたね。『まだマシ』という言い方は、太い針のように刺さりました。痛すぎる言葉です。個人の悲しみはその人にしかわからないのに。」
何か言葉をかけなくてはと思うのかもしれないが、流産や死産を経験した人に対しては、励まそうとして余計なことを言わない方がいいと千春は思っている。
>>NEXT「そんな暗い顔してると赤ちゃん来なくなるよ」最愛の夫から投げかけられたひとことと、善意マタハラを通して学んだこと。につづく。(ライター 中小林亜紀)
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