横井千春(仮名)は35歳。
28歳で一度離婚を経験し、現夫と2年前に再婚したパート従業員だ。顔色は冴えず、声をかけるのも気が引けるほど暗くかたい表情のまま、重い口を開いた。
「苦しんでいるのは私だけじゃないことを確認したくて、流産経験者の経験談を探して読むことが度々あるんです。でも、それを読んでさらに落ち込んでしまうことも。そうなることはわかっていても、辛いのは私だけじゃないと思いたくてつい読んでしまいます。精神的にまいっているのかもしれないですが、だからと言ってメンタルクリニックには絶対に行きたくありません。周りからしたら完全に腫れ物ですよね。気を遣わせて悪いなとは思っているんですが」
千春は1年ほど前、最初の流産に苦しんだ。子どもを授かった喜びもつかの間、妊娠13週で医師から胎児の心拍が確認できないことを告げられたという。
「私の場合は病院じゃなくて助産院に通い始めたため、医師による診察の間隔が普通の妊婦さんと違ったんです。それで、発見が遅れたとのことでした。13週となっていますが、正確にはもっと早い段階だった可能性が高いそうです。」
産む予定にしていた助産院の提携先である産婦人科で妊婦健診を受けた千春。医師は高齢の男性で、対応は冷淡だったという。
「前に講演を聞いたことのある助産師さんに憧れて、どうしてもそこで産みたかったんです。それで申し込みをして、妊娠がわかってからそこに通っていました。助産院では医療行為を行うことができないという話でしたので、詳しい診察については提携先病院に行くしかありません。流産の診断を下した提携病院の医師は、その病院の院長です。診察室の内診台で時間をかけて診察をした後、うん、やっぱ心拍がない、と言いました。」
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