「なかには、定例会議自体を見直すべきだという意見までありました。驚いてしまいましたよ。今までの会議で話すのはほとんど私。他の奴らはまるで貝のように押し黙っていたんです。それなのに急にそんなことを言い出したんで、彼に唆されたのではと訝しむほどでした」
これまでの定例会議は、言うならばお通夜のようだった。生産性のない会話が続き、時間が早く過ぎるのをみんなが待っているのは明らかだった。それがどうしたことだろう。意見交換がなされるだけで、ここまで活気あふれる時間になるとは。康は決まりの悪い気分になったという。
「これまでの俺ってなんだったんだろうって、思いましたよ。その日の会議では部下たちが次から、次へと発言をするので、私は口を挟む隙がありませんでした。あれよあれよという間に、話がまとまり定例会議はさまざまな時間帯で試してみようという結論に至りました。
『次回からはまず火曜の15時にしてみましょう!どうですか部長?』と意見を求められましたが、反対できるような雰囲気は微塵もなく、了承せざるをえませんでした」
この会議をきっかけに多くの部下たちが康に意見をするようになった。もちろんくだらないものもあったが、的を得ている意見や考慮すべき意見がそのほとんどだった。誰からも意見をされない環境、いわば独裁的な支配力こそが、リーダーであると思っていた康にとっては青天の霹靂だった。
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