「部下たちを管理する、それは意見を言わせないことだと思っていました。その上で業務を滞りなく進める、これが僕の思い描いてきたリーダー像です。それでうまくいっていたのにも関わらず、彼が来てからというもの求心力を失っている……というか、リーダーの座を奪われた気持ちです。
あと数年で役職定年なのに、こんな仕打ちをされるとは思ってもみませんでした。部下が上司に意見をするなんて……僕の時代には考えられません。言われたことを言われた通りにやっておけばいいじゃないですか……」
康の願いとは裏腹に部下たちの変化は止まらなかった。意見を言い合い、時には議論をして、よりよい解決策を見出そうとクリエイティブに仕事を進めるようになっていった。康は完全に1人置いてけぼりにされてしまったのだ。
「上司の私に意見を聞くのは当然のことでしょう?そんなことすらしないんです。私はハンコを押す係とでも思っているんじゃないですかね。さすがに呆れて上層部に報告をしました。彼が来てから、古き良きルールが守られていないと」
しかし、理解を示してくれると思っていた上層部から返って来た言葉は、康が想像していないものだった。
「研修を生かさない君にも問題があるのでは?と言われてしまったんです……」
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