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LIFESTYLE 女たちの事件簿

【後編】昭和の管理職おじさんが直面する50代の憂鬱

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それは先日、夕食に前日に作った筑前煮を出されたときのことだった。

「思わず『虚しい食卓だな』と言ってしまったんです。嫁の顔が凍りついたことをよく覚えています。確かに言いすぎた、そう思いましたが後の祭り。その日以来、口も聞いてもらえません」

こうして、康は会社だけでなく家でも居場所を失ってしまったのだ。

「俺ばっかり、損な役回りですよ。誰からも感謝されない、誰からも慕われない……」

あまりに落ち込んでいる康を不憫に思ったのか、娘が週末の晩酌に付き合ってくれたときのことだ。

「彼女も働き始めて2年なので、色々あるよななんて話をしながらビールで乾杯をしました。久しぶりにいい気分になって、思わず、報われない自分の愚痴をこぼしたんです。そうしたら……」

ーずっと同じで、変わらないパパにも問題があると思う。時代の流れもそうだし、家族の形もそう。変化にさらされているんだから、私たち自身も変わらなきゃ。それに感謝されないとか、慕われないとかいうけど、自分はどうなの? 誰かに感謝したの? 誰かを慕っているの?ー

その言葉を受け止めきれない康を見て、娘はすぐに「うまくいかないことも多いけどね」と明るくいい、また別の話題を始めた。

「ハンマーで頭を殴られたような感覚でした。子どもだと思っていた彼女にこんな正論をぶつけられるなんて。子どもといえど1人の人間。尊敬する部分や学ぶべきところがたくさんある……妻がいつも話していた言葉が頭をかすめました。会社でも家でも独りよがりだったのは、自分だったんですね。情けないです」

康は心を入れ替えるべく、努力を重ねている。ただ、長く身についた感覚はそう簡単には変わらない。役職定年は残念ながら、前倒しされることになりそうだ。次の部長はあの彼になるらしい。



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