「愛理ちゃん、オレもプランを考えたんだけどね。知り合いの旅行会社に世間話程度で話してみたら、かなり安いプランを出してくれたんだ!」
体を重ねた直後、「たか君」は、おもむろに立ち上がりつつ一枚の紙を見せてきた。
30歳の男性って、こんなにも絶倫なのだろうかと愛理は絶句してしまう。愛理は、震える手で手渡された紙を受け取った。
「え!? こんないいホテルなのに、こんなに安く行けるの? しかもこれ、ビジネスクラスのフライトじゃないの!」
「うん、すごい安いよね! でも出発も近いから、明日中に入金しなきゃ確保できないんだって」
「絶対このプランがいいよ! 2人で90万円でしょ? ちょっと予算オーバーだけど、これにしようよ、たか君!」
「やっぱりそうだよね! じゃあ愛理ちゃん、今から支払いに行こうよ」
「うん。でもこの代理店、本当に大丈夫だよね? ちょっといいプランすぎるから」
「そんな心配はいらないよ! でもありがとう。愛してる、愛理ちゃん……」
©︎gettyimages
ホテルを出た二人はその足で、銀行のATMに赴いた。
「オレの分も出しておいてもらえないかな? 今キャッシュカード持ってなくて」という彼の申し出を愛理はそのまま受け止め、約90万円の現金をおろし、そして彼が持参した旅程表に書いてある「振込先」に入金を済ませた。
「愛理ちゃんとロンドンに行けるなんて、夢みたいだ。本当に出会ってくれてありがとう」
愛理は、「たか君」に夢中だった。
出発まで忙しいから、次に会えるのは成田空港の出発ロビーだという彼の言葉に少し寂しさは覚えたが、それ以上に愛理は、二週間後の彼とのロンドン旅行に思いが募るばかりだった。
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