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出張というワードの後に登場した、スタッズ付き黒革衣装と棒。一体なんのことかわからなかった私に文子が一言。
「SMよ。彼のカバンの中にボンデージ用の衣装と拘束具、ムチを見つけたのよ」
私たちの会話に未だかつて登場したことのないワードの出現に、言葉を失った。
唖然とする私を横目に文子は話を続けた。
「見たこともない道具ばかりで、一体なんのためのものか一瞬わからなかった。特殊な道具ばかりで。でも、SMしか想像できない……そんなアイテムばかり、本当に驚いたわ。でも、実家だったし、すぐにカバンを元に戻し、何事もなかったように夕飯を食べて、車に乗り込み、私が運転して実家から家に帰ったの。息子と楽しそうに話す夫を横目に、私の心の中は疑問と不安が大きく渦巻いていて……取り繕うのに必死だった。よく事故を起こさなかったと思うわ」
あまりの動揺にカバンの中身が一体なんだったのか?を帰宅直後に聞くことができなかったという文子。結局、健一にことの真相を聞いたのは、それから2週間後だった。
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