「遺留分を辞退するとかないんですか? もちろん、お世話になりましたからその分はお支払いします。でも法定通りではあまりにも額が大きいので」
「そうですよ。いくら結婚したからって知り合って間もないし、そんな権利ないでしょ」
すると麻子はあっさりと言った。
「いえ、私は誠司さんが決めてくださったことに従うだけですから」
父をそそのかして遺言書まで書かせたのは、明白だった。
結局、子供達3人では現金で資産の1/2の金額を支払うことができないので、自宅の土地や別荘などを麻子に渡すことに。次女の美穂は、世田谷の100坪の自宅に一緒には住みたくないと出て行き、現在は麻子が一人でペットと住んでいる。
果たして父はこれで満足だったのだろうか。もうその答えを聞くことはできない……。仏壇の遺影はただ静かに笑っているだけだ。
Text:女の事件簿調査チーム
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