それから数日後。
「由香里さん、小林さんお引越ししたのよ」
「え!? ……知らなかった、です。あ、そうなんですか……」
ヒロユキ夫婦が引っ越ししていたことを、由香里は朝の井戸端会議で知った。あんなに激しい時間を過ごしたのに。あんなに強い罪悪感の中で、共に過ごしたのに。さよならも言わずにいなくなるなんて……。
「確かあれでしたっけ、旦那さんのお仕事が変わったかなんか……でしたっけ」
ヒロユキから聞いた話を、さも噂話を聞いたかのように由香里は話す。
「違う違う、やだもう由香里さん知らないの? あの旦那さんの——ヒロユキさん、会社で出世してね、海外にご転勤になったのよ。ご栄転よ、ニューヨークですって!」
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