涙ながらの彼の話を整理すると、こういうことだった。
ヒロユキは、年上の妻との不妊治療に多額のお金を費やし、マンションのローンも支払い、精一杯に日々働いていたが、会社の業績悪化を理由に自主退職を促され、実は先月末から無職状態だということ。
そして貯金は全て不妊治療に消えてしまったため、蓄えはほとんどないにも関わらず、いまだに妻には無職になってしまったことを言えずにいて、毎日出社しているふりをしているということ。
転職もなかなか難しく、本当は携帯も何もかもを家に置いて命を絶とうとしたが、踏ん切りがつかず、結局帰ってきてオートロックを開けてもらったということだった。
あたたかいハーブティを淹れながら、由香里は静かにヒロユキの話に耳を傾ける。
ああ、こんなときに不謹慎だけど……この人の横顔は本当に美しいな。奥さんが羨ましい。大人の男の涙、久々に見たな、どうして困り顔ってこんなにキュートなんだろう。
由香里がそんなことを考えていると、ヒロユキはいきなり由香里の顔を見つめ、由香里の手を握った。
「……え?」
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