「子供がいてもいなくても、人生それぞれに苦労がありますもんね。お気持ちわかりますとはとても言えませんが、お気持ち拝察します。それより……ヒロユキさん、ですよね。会社には間に合いますか?」
由香里が話題を変えようとすると、ヒロユキはなぜだか困り顔でそこから動けないようだった。そして、静かに涙を流し始めた。
「あの。すいません、ちょっと、あの、ご近所さんの前でごめんなさい、その」
30代後半の男が見せる涙に動揺した由香里は、慌てて「とりあえず!」と言いながらヒロユキを部屋に招き入れた。
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