「ごめんなさい、僕が死ねなかった理由のひとつは、由香里さんのことを思い出したからでもあるんです」
困惑する由香里に、ヒロユキは早口で捲し立てる。一筋の涙がヒロユキの頬を伝う。
「いつも朝見てて、素敵だなって思ってて。思わず、言い訳してチャイム鳴らしちゃって」
手がさらに強い力で握られる。由香里の心臓の鼓動が、一気に加速する。
「好きです、由香里さん。……だめですか?」
どう答えればいいというんだろう、何がだめと言えば良いんだろう。由香里は泣きじゃくった子犬のようなヒロユキの手を、自分から振り払うことはできなかった。
そして、小さな言い訳を適宜挟みながら、本気では断れないまま身体を重ね合わせた。
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