すべてを最後まで聞いた乃江は、ため息をついて言葉を発した。
「私は……あなたと最初から最後まで身体の関係だったし、付き合っているという認識もなかった。ラブホテルに集合なんてこともあったし、それで納得もしていたし。あなたと結婚する気も元々なかったし、正直、今回のことは怒っているとかではないの」
「うん、それはそう……だよね」
マサトは少しほっとした表情になる。
「だけど、麻美は私があなたのセフレだったなんて知らないから。絶対に私のことは黙っててよね。結婚式なんかでも会うことになるだろうけど、そもそも知らないふりをしてほしい」
「それは、もちろん。俺だってそうしてもらわないと……都合が悪いから。むしろ、ありがとう。いやしかし、驚いたな……ここが繋がってるなんて。東京は広いようで本当に狭い、マジで実感した」
「私もまだ信じられない。私たちね、毎週のように恋愛話もしていたのに、2人とも裏ではこっそりマッチングアプリで男を漁ってて、それをお互いには黙ってたって思うと、なんだか一気に拍子抜けしちゃったわ。同じ男に抱かれて……なんか、ばっかみたい」
乃江は、遠くのドリンクバーを見つめながらため息をつく。
所詮、女友達なんて虚構だな、と思う。仲良しごっこをやってるだけの、見せかけの存在。高校時代から知ってて、一緒に東京で頑張ってきて、でも2人とも本当の姿はお互いに見せようとしてこなかったのだと思うと、乃江は一気に笑えてきてしまった。
マサトが突如切り出す。
「となると、本題なんだけど」
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