「パパ、今日もありがとうね」
出社ついでにゴミ出しをしようとする夫に、麻里絵(仮名)は見送りがてら玄関で感謝を伝えた。お互いに35歳、愛する一人息子ハルト(仮名)は既に小学校へと向かったあと。結婚8年目の家庭生活は、お互いに慣れたものだ。
「こちらこそありがとう。専業主婦とはいえ、ハルトの世話が大変なのはよくわかっているよ。今日も遅くなるけどよろしくね」
スーツ姿の夫を見送った直後、麻里絵はすぐに化粧をして身支度を始めた。
今日は専業主婦「のはず」の麻里絵の、秘密の勤務日なのだ───。
※この記事は取材を元に構成しておりますが、個人のプライバシーに配慮し、一部内容を変更しております。あらかじめご了承ください。
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麻里絵が秘密のバイトを始めるきっかけは、ツイッターだった。
金銭的に困っているわけではない、日常に何か大きな不満があるわけでもない。息子のハルトは小学1年生で、ようやく子育ても少しラクになりそうな気配は見えてきているし、不動産会社に勤務する夫の収入は同世代に比べればかなり良い。
だからこそ自分は都内で専業主婦ができているということも理解しているし、感謝している。夫からは「ママ友などと美味しいランチでも食べるんだよ」と、優しい言葉までもらっている、それは、それは恵まれた身分……であるはずなのに。
ある日、子育て情報を収集しているために使っているツイッターで、偶然見かけたツイートに興味がそそられた。
「ママこそ高収入! 週1、3時間〜の超短時間勤務でもOK!」
どんなに簡単なパートでも、こんなに恵まれた条件のものはない。怪しいと思いつつも、ツイートをしている人物のそのほかの求人ツイートを覗くと、「風俗ではない」「男の人と触れ合う仕事ではない」と強調されている。そして書かれた、「気になる人はDM(メッセージ)をくださいね」の文字。
「スキルのない私でも少し何か働いてみたい、人と関わりたい」
そんな気持ちで送ったツイッターのメッセージには、すぐに返信が来た。相手はこの職業を専門としている、オンライン上でのスカウトだと名乗った。
Text:女の事件簿調査チーム