料理芸人のクック井上。です!
“飲食店は開店してから、2年以内に半数が閉店に追い込まれる”
というデータがある中、町には何十年もの間、お客に愛され続けてきた洋食屋さんがあります。
そんな老舗の洋食屋を巡り、その想い、歴史、人、町に触れる連載コラム【洋食天国】。
vol.14は、大井町『ブルドック』にやって参りました。

創業は1949年(昭和24年)、第二次大戦の終戦から4年後。

大井町駅近くの旧闇市にある“お食事は大井一うまい・やすい”でお馴染みの洋食屋です。

小さな店舗が所狭しと立ち並び、今も旧闇市があった当時の雰囲気が色濃く残っています。
“美味しいお店が多い”と噂のこの界隈の中でも、『ブルドック』は別格の支持率。ランチ時になると、行列ができるほどの人気ぶり(現在は新型コロナ感染対策中で、お客様も自主的に協力中)で、過去に数多くの番組に出演歴有。

ショーケースには、各番組でのロケ時の記念写真が飾られています。
店内へ入るとお馴染みの像がお出迎え。

“きたなシュラン”、第一回目にも出られたお店です。
実は、この日も当取材ロケ以外にも、複数のロケ隊がまさかの同時に来ていました! しかし、そうでもしないと営業に支障をきたすほどの注目度という事。目の前のお客さんが一番大切ですからね。
それでは早速、大人気のお料理をいただきましょう。

『ブルドック』の一番人気と言えば「メンチカツ」! 厨房を覗くと、器用にまな板と包丁で、練った挽肉を平たく成型。

こんがり揚げてキャベツの千切りの上にドーンと乗せたら……

巨大「メンチカツ」見参! なんと1枚約400gもあって、超ド迫力。
もはや、「メンチカツ」は『ブルドック』の代名詞と言っても過言ではないメニュー。これとセットのご飯を食べて、腹十二分目にならない一般人はいないんじゃないでしょうか(笑)。
さて、僕は『ブルドック』へ来ると、いつも他のメニューも頼んでみたいと思いつつも、どうしても「メンチカツ」の引力が強すぎて、それ以外のメニュー頼んだことがありませんでした。
ですが今回、この取材を通じて、初の「メンチカツ」以外のメニューをオーダーしたいと思います。
“「ハンバーーーグ」、お願いします!”
前々から、カウンターで他の方が食べているのを見て頼んでみたかったメニュー。なぜ頼んでみたかったかというのは、出来上がったらわかるでしょう。

まずはフライパンで、表面をしっかり焼いていき、強めのメイラード反応のお目見え。
油多めで揚げ焼きにして、美味しさを中に閉じ込めます。そのフライパンの傍らには、お店特製デミグラスソース。

容器についたデミグラスソースは、ランチ時の戦争のような忙しさの証。
お皿にキャベツの千切りを敷き、焼いたハンバーグを乗せ、さらにデミグラスソースをかけたのがコチラ!

ワクワクが止まらない、ダブルハンバーーーグ!
しかし、これで終わりません。
マスタードを少し絞って、もう一個ハンバーグを重ね、その上からホワイトソースをかけて、更にケチャップを絞ったのがコレだ、1・2・3!

威風堂々、トリプルハンバーーーグにズーム!

なんと言う高さ、なんと言う画ヂカラ。
アンドレ・ザ・ジャイアントも真っ青、まさしく巨大なるハンバーグ山脈であります。
ヤバい、見ているだけでお腹いっぱいになりそうですが、この山脈を喰い尽してやろうじゃないの! まずは1段目のハンバーグをパックリ割ってみましょう。

上面にはホワイトソースとケチャップ、底面にはデミグラスソースを纏ったハンバーグをパクっ!

噛みごたえがあって肉肉しい、ハンバーガーのパティのような、漢ハンバーグだ!
表面の香ばしさ、ケチャップの甘味、マスタードの酸味と風味、デミグラスソースの深みと旨味が相まって、こりゃたまらん。

ハンバーグを一口食べてはご飯、またハンバーグを一口食べてはご飯……。

そして時折食べる、デミグラスソースが染み込んだキャベツが良い句読点。
食べ進めると2段目のハンバーグは、デミグラスソースとマスタードの味、3段目はデミグラスソース単体の味。それぞれ違う味が楽しめるのが楽しい。

山脈を崩して、1段目、2段目、3段目を少しずつ食べ進めていきますが、なかなか減らない(笑)。

まだ、登山でいうと5合目あたり? 登頂目指して豚汁で勢いをつけよう。

色んなお野菜と豚ばら肉の旨味が詰まっていてご飯がススム。よしあともう少し、山頂が見えてきた。最後はキャベツ&ハンバーグon theライス!

プチロコモコ丼のようにして、フィニッシュ!

よっしゃ、とうとうハンバーグ山脈を制覇したぞー!
途中、もう無理かという瞬間もあったけど、途中からはクライマーズハイ的な“トリプルハンバーガーズハイ”に入ってピッチが上がり、美味しくいただきました。
皆さん、『ブルドック』には、完全腹ペコで来たほうが良いです。間違っても、小腹が空いてる程度で来ちゃいけませんよ(笑)
ってなわけで、店主・鈴木謙さんにお話をお伺いしましょう。

── ご馳走様でした。まずは「メンチカツ」本当に大きいですね。1日に何枚ぐらい出ますか?
店主・鈴木謙さん そんな事より、手品見る? ハイ!(口からピンポン玉が飛び出す)
── あははは(笑)いや、そうじゃなくて。「メンチカツ」は1日で多い時に何枚くらい売れますか?
店主・鈴木謙さん 1日で? 100枚ぐらいじゃないかな?
── って事は…「メンチカツ」だけで1日当たり約40kgも仕込んでるんですか??? 凄い…。「ハンバーグ」めっちゃボリュームで、味も、世の男性が大好きな味でした!
店主・鈴木謙さん お腹いっぱいになったでしょ? 「メンチカツ」は、紐付けて履いて帰っても良いよ!
── 草鞋(わらじ)かっ! いや、本当に草鞋みたいでした! 今日も他に2件ほど取材に来られているみたいで、大人気ですね。どちらから撮影に来られてるんですか?
店主・鈴木謙さん テレビ局の大食い系の番組と、デリバリーアプリの撮影。
── 同じ時間にしちゃって大丈夫でしたか? (他のロケ隊の方々に)僕ら、早めに終わらせますね。
店主・鈴木謙さん (みんなに)一気にやっちゃった方が、すぐ終わるでしょ? あははは(笑)
── あははは(一同苦笑)それにしても、なんでデカ盛りを始めたんですか?
店主・鈴木謙さん みんな喜ぶでしょ? あっ、デリバリーアプリの撮影で使ったお料理、持って帰る? みんなも食べな。

── えっ!? いいんですか?
店主・鈴木謙さん ほら、もっと持って帰りな!(と、テイクアウト用容器と輪ゴムをを差し出す、店主・鈴木謙さん。サービス精神!) そして、この言葉を贈ろう。“たとえ明日、世界が滅亡しようとも今日私はリンゴの木を植える”。あははは(笑)。

な、なぜ、ルターの名言を(謎)。
という事で、『ブルドック』はお料理のボリュームが異次元なのはもちろん、店主・鈴木謙さんの独特なノリと、サービス精神旺盛なお人柄も超異次元!
あまりの不思議な雰囲気に、タイムスリップして、本当に戦後当時の大井町駅前・闇市に迷い込んでしまったんじゃないかという気分になりました(笑)
今回は大井町『ブルドック』にお伺いしました。
店主・鈴木謙さん、有難う御座いました!

老舗洋食屋さんの魅力は、単にそのお店の味や歴史だけではありません。町の雰囲気・町の歴史・お客さんの雰囲気・店主のキャラクター……、全てが味わいとなって魅力となるのです。
そんな老舗洋食屋さん、まだまだ東京のあちらこちらに有りそうです。まだまだ巡って、その想いや歴史、人や町に触れたいと思います。
ブルドック
東京都品川区東大井5-4-13
03-3471-6709
営業時間 11:40~21:00(20:30 L.O)
日曜営業
定休日 水曜・第3木曜
※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。
Text:Cook Inoue
Photo:Takuji Onda
Edit:Takashi Ogiyama
クック井上。プロフィール
お笑いコンビ「ツインクル」のクック井上。です! 芸人でありながら、食のイベントMC・料理教室講師・食のプロデュース等も! ●フードコーディネーター●ホームパーティー検定●食育インストラクター●野菜ソムリエ●BBQインストラクター●アスリートフードマイスター●こども成育インストラクター●パエリア検定 など食に関する資格も多々あり。
Instagram Facebook オフィシャルブログ