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「口裂け女」「自民党支持者は劣等民族!」と暴言するジャーナリストを産んだ、戦後教育の問題点とは

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

先週、ジャーナリストの青木理氏が、自民党支持者を「劣等民族」と評した自身の発言について謝罪、撤回しました。しばらくの間「地上波のテレビ番組」のみ活動を自粛するそうです。のみ?

コトの始まりは9月12日に配信された津田大介氏のネット動画。「人々はなぜ自民党に投票し続けるのか」という津田氏の発言に対し、青木氏が「劣等民族だから」と答え、笑う。まるでナチス高官みたいなハイリスク発言をぶっ放したんですね。

差別表現の芯を食った問題発言でしたが、恐らくはご本人、当初は謝罪せずともイケる、と踏んでいたのでは。身内も大半はダンマリでしたし、そもそも過去、同じような問題発言・騒動を繰り返してきた御仁なので、アンチから見ても今さら感はあったようで。それが突然、2週間以上経ってからの謝罪。

実はご本人がなかなか謝罪しないもんだから、レギュラー出演していたテレビ局側に批判の矛先が向いてしまったのです。青木氏が「テレビだけ自粛します」という斬新な反省手法を選んだのも、そういった事情からだと。何しろ謝罪の内容自体が、まるで「謝りたくない学生」の反省文みたいで、

「発言の経緯や背景、言葉にこめた意味はあるが、民族という単語を持ち出し、優劣を付ける発言は自分も好まない、許されないと思っており、軽口とは言え、発言自体は極めて極めて不適切だった(要旨)」

長いよ。政治家の答弁くらい長い。あまりにも長いのでかなり短く要約したのに長い。シンプルに「本音です。口が滑った、ゴメン」の方が全方位に納得を得られたと思うんですが。さらには、

「口先で謝罪、撤回というと、どこかの政治家みたいに思われるので」

という、炎上時に絶対やってはいけない「謝るテイで誰かを批判する」をやらかしている点からも、やはり本心では謝りたくないんだろうな……と。

青木氏は以前にも、自民党の高市早苗氏を「口裂け女」と中傷しており、ただご本人はこれらの発言を、誹謗中傷ではなく必要な論評、政治に対する正当な批判であり非難には当たらない、と本気で思っているフシがあるんですよね(違いますけど)。

戦後教育の弊害なのでは……

いい年した実名の著名人が、人としてどうかと思うような幼い中傷をやっちゃう。これは戦後教育が「中傷と論評」について本気で教えてこなかった結果であり、弊害だと思っています。

誹謗中傷とは何か、中傷と論評は何が違うのか、論評なら何を言っても許されるのか、こういった深い議論を「人の悪口を言ってはいけない」というワンフレーズで終わらせてきた結果、中傷と論評の切り分けすら出来ない大人達を世に送り出してしまったのです。

ですが、これは教育現場を責めるような話ではありません。だってコレ、もしちゃんとやろうものならカオスですよ。「彼は足が遅い、彼女は体重が重い、中傷じゃないよ、事実に関する論評だよ」というイジメに走る問題児(と、その保護者)が大量発生し、その対処だけで現場崩壊必至です。予めこういった事態にも耐えうる体制を作っておく必要があり、でもこれがまた難しいのです。

皮肉にも今、学校現場で教員たちを一番悩ませているのは、子供たちによるSNSの誹謗中傷トラブル。もちろん学校が「誹謗中傷」「意見論評」の教育に取り組んだ程度で、青木氏のような困った大人が出現しなくなるなんて、そんな甘い話ではないのですが、

「中傷と論評の違いが理解できない大人」

を社会全体で失笑できるようになれば、中傷をぶっ放す人物も流石に恥ずかしくなり、言論トラブルも今よりは減るはずです。

余談ですが……今回の騒動で青木氏寄りだったSNSアカウントが「あれは劣等民族じゃなくて『列島民族』だよ」とエクストリーム擁護していたのに、結果的にご本人の謝罪でハシゴを外される、という場外コントも起きていました。あれは気の毒でしたね。

 

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)

※本記事のタイトル・画像はFORZA STYLE編集部によるものです。

 



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