「一度、上の娘が久しぶりに団欒の席で笑顔を見せたことがあったんです。それは小学校を卒業する頃でした」
食事中、幸樹さんがくしゃみをしてしまい、食べていたものの欠片がたまたま隣に座る妻のご飯茶碗にホールインワンするという珍事があったときのこと。
「家族で笑いました。凄く笑って、久しぶりに。でもそのあと、上の娘は『しまった、笑っちゃった』みたいな顔になったんですよね。寂しかったな」
そこでさらに幸樹さんを追い詰めたのは、妻の謎の行動だった。
「妻が、ご飯茶碗に入った僕の食べ物の欠片を、つまみ出して下の娘の方に投げるフリをしたんです。すると、下の子が『キモい、汚い』と笑いながら嫌がったんですね。
昔なら何てことない冗談として受け止めることができたと思うのですが、僕はすでに上の子のことで傷つきやすくなっていたので、それが凄くキツかったんですよ」
しかも、妻はその食べ物の欠片を、長女に対しても投げるフリをした。悪趣味ではあるが、長女の笑顔を見て、さらに笑いを起こそうと考えたのかもしれない。
ところが……
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