その話を聞いた彼は、それもれっきとした性被害だと言った。
「これまでその事実を忘れていたことにも驚きました。姉の友達はその後もうちにきていました。でもあれ以来、そういうことは一度もなかったので、何かの間違いだったのかもと記憶が抹消されてしまったのかもしれません。
胸を見ると萎えるのは明らかなトラウマだったんだと知った瞬間でした」
姉の友達を恨んでいるのだろうか?
「正直、わからないです。でもいい気持ちがしなかったことを最近よく思い出します。ゾッとしたというか。でも当時の僕がそれを周囲に訴えられたかどうかと聞かれれば、答えはNOです。
どうやったって言い出せなかったと思います。それに僕が悪いことをしたような気持ちがあったことも事実です。でも、大人になって信頼できる人に話をすることで、どこか救われた気持ちになりました。
性被害かどうかわからないとか、自分が悪いとかどうしても内省的になりがちなことですが、話をしてよかったと今は思います」
真さんや彼のように、みなが性被害を口にすることができるとは思わない。しかし、彼らが勇気を持って打ち明けてくれたことで、救われている人がいることもまた事実だ。
男性の性被害の実情は、まだ見えてきていない。某大手事務所の件も氷山の一角であろう。目を背けることなく、直視していかなければならない問題だ。
取材/文 悠木律
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