知沙子さんは夫の言い分をよく理解することができた。しかし、感じているストレスを軽減する方法はあるはずだと言い返した。
「夫は少しイラついて、『私をかばったり楽をさせたりするために田舎の慣習を批判したりすれば、その反発の矛先は夫ではなく私に向くはずだ』と言い出しました。そうさせたくないから場の雰囲気に合わせてる、と。なんか詭弁ぽくないですか?」
「そこまで私のことを考えて行動できるなら、そもそもゴールデンウィーク帰省をやめればいいのに」と知沙子さんは思うが、そんな決断が下されることはない。もやもやした感情を残したまま、つかの間の自由時間は終わったという。
「今年のゴールデンウィーク帰省で恐れていることの一つが、前回の帰省まで毎回やっていた最終日の畑仕事です。義実家は広大な畑で複数種の野菜を無農薬栽培しています。『お土産にたくさん持っていきなさい』という義母の号令を合図に、みんなで農作業スタートです」
「持って帰るお土産を自分たちで収穫する」という滞在中最後のイベントは、かなり体力を消耗するハードな作業なのだそうだ。
「義祖母のモンペと農作業用の帽子を借りて、畑の中でキャベツやじゃがいもなどを収穫します。親戚の人たちが、土を触っていると癒される、とか余計なことを言うので、義父母はご満悦です。
お昼には穫ったばかりのお野菜を使ってバーベキューをします。文句ばかり言ってるみたいですが、ほぼ立ちっぱなしなのでこれがまた過酷なんですよね」
ありがた迷惑とはこのこと、と知沙子さんは言う。
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