いつの時代でも人々を悩ませるのが人間関係の問題だ。引っ越しや転職、進学などで環境が変わり、新しいコミュニティに馴染めずに苦労した人も多いのではないだろうか。
だれも知り合いがいなくて不安な時にだれかに手を差し伸べてもらえたら、どんなに救われた気持ちになることだろう。でも、その人にもし、誰も知らない裏の顔があったとしたら……。
※この記事は取材を元に構成を作成していますが、個人のプライバシーに配慮し、一部内容を変更しています。あらかじめご了承ください。
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藤本あずさ(仮名)は、今年27歳になる会社員。新卒で入った会社をすぐに辞めてしまい、短い期間で転職を繰り返している。
あずさは地味で暗そうな外見をしており、あがり症で会話も苦手だ。新しい職場に入っても緊張から失敗を繰り返し、すぐにいじめの対象になってしまう。
「今回で4回目の転職でした。回数を重ねるごとに転職は難しくなっていきます。もう失敗できない。気分は初日から背水の陣でしたね」
そんなあずさを迎えたのは、先輩社員である古川朋美(仮名)の、人の良さそうな笑顔だった。
「わからないことがあったら、なんでも聞いてくださいね」
「...みんな最初は私に、そう言ってくれます。でも、だんだん要領が悪い私に愛想をつかしてしまうんです。この人にも嫌われたらどうしようって、いきなりマイナス思考全開でした」
しかし、そんなあずさにも朋美は優しく接してくれた。
覚えが悪いあずさに丁寧に仕事を教え、上司に叱られた時もやんわりとフォローしてくれる。あずさが何かを言うと烈火のごとく怒る上司も、朋美があずさのフォローに回ると、表情をゆるめて説教から解放してくれた。
「なにからなにまで面倒を見てくれて、朋美さんが天使のように思えました。この会社に入れてよかったって心から思ったんです」
休憩時間になると、朋美はあずさをランチに連れて行き、あずさが他の女子社員と仲良くなれるように気遣ってくれた。
朋美のおかげであずさは社会人になって初めて、仕事が楽しいと思えるようになった。