「ただ、これからの人生、不安しかない。これから子育てを僕がメインでできるのかと。ただ、妻に渡したら殺されそうな気もする。そうなると、父親の社会責任が問われますよね。弁護士も同じことを言っており、息子の親権は僕が取れると言う。でも、正直、父親の実感はない。なぜなら、自分が産んでないから。特別養子縁組のことも頭をよぎるのですが、そんなことはできないし……もう、八方ふさがりです」
唯一の安らぎが、先輩医師・加代子さんとの語らいだという。しかし、加代子さんはとっくに再婚しており、夫は年下でイケメンの医師で性格もいい。孝明さんには勝ち目がない。
「恋愛というより、話を聞いてほしい、ほめてほしいだけかもしれません」
父親になったら、いつまでも子供気分ではいられない。孝明さんのこれから進む道がどこに通じているのか。収入、社会的地位、財産……なにもかも持っているはずなのに、その表情は暗かった。
Text:Aya Sawaki
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