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FASHION 百“靴”争鳴

古き良き昭和の工場、 "セントラル靴"とともに歩んだ三陽山長 Vol.3

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昭和の業界人

職人はもとより現場を束ねる中澤(敬明)さんが厄介だった(笑)。ろくに口も聞いてくれないし、名前さえ呼んでくれない。わたしはめげずに足を運びました。ほら、むかしは靴をつくってもらおうと思えば一升瓶を抱えて乗り込んで、差し向かいに呑まなければならないってのがあったでしょ。まさにあれです。(コミュニケーションがとれるようになるまでに)1年はかかったんじゃないかな。

いまだに口は悪いけれど、江戸っ子の照れ隠しなので心配は無用です。といっても、わたしも慣れるのに時間がかかりましたねぇ(笑)。

さすがにわたしも顔色が変わったのが4〜5年前。ある日いきなり三陽山長の木型を送り返してきたんです。原材料費があがったのにおんなじ値段でやってられるかってわけです。これは会社の論理だから申し訳ないところではあるんですが、期中の値上げには対応できません。噛んで含めるように事情を説明して、ことなきを得ました。

三陽山長の靴はよそと比べても高いほうでしょう。謹製なんて軽く10万円を超えますから。でもね、安いということはどこかに無理をさせているということです。職人がちゃんと生活できて、誇りをもって仕事に励む。その姿が後進を生む。そうして業界の層が厚くなっていく。そのためには安売りしちゃいけないんです。

おかげで製造現場の若返りはうまくいっています。事務所にいたでしょ。スキンステッチは中村さんというまだ若いあの女性が担当していますが、舌を巻くレベルですよ。

いたずらに疲弊するようなよそのやり方には辟易しています。我々の足を引っ張るなと。

だいたいがウェルテッド製法の靴は修理して履き続けることを前提としたものです。であれば、材料だっていいものをつかわなければならない。どうしたってそれなりの値段になるんです。

アツくなってしまいました(笑)。話を戻せば、セントラル靴には靴づくりに集中してもらいたいので、いろいろと配慮しています。革の仕入れをこちらでやっているのもそう。革はある程度の量をまとめて発注しないと品質が安定しない。それには資金がいりますからね。



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