2021年、三陽山長はプレステージライン、謹製をローンチしました。
ミスター三陽山長、
追い風に乗ってプレステージラインをローンチ
ここのところパターンオーダーが好調です。明らかにお客様の目が肥えて、もう一段上を求めていらっしゃるのを肌で感じました。この追い風に乗るべく、2021年に立ち上げたのが謹製と名づけたプレステージラインです。ちょうどブランド誕生20周年という節目だったこともあり、思い切ってローンチしました。
コロナの最中にもかかわらず、ほとんどのモデルが完売しています。ファーストコレクションに登場した謹製 友二郎(三陽山長の売り上げの半分近くを占めるストレートチップ、友二郎をベースにしたモデル)の再販を望む声が多いんですが、革のほうに限りがあるんでこの声に応えることができないのが辛いところですね。
この春出した新作のローファー(謹製 弥七郎)は、わたしどもが あっけにとられるほどのはやさで売れました。ドレスシューズの極みを目指すコレクションですから、スリップオンを加えていいものかと悩むところもありましたが、謹製は返りの良さとかかとのフィット感が持ち味。ローファーにこそ求められるものです。ラインナップしてしかるべきだろうと考えました。
謹製の勘どころは素材もつくりも最高峰ということです。
アッパーはアース社のボックスカーフとユタカーフ。フランス北東部のアルザス地方で1842年に創業した知る人ぞ知る名門老舗です。業界人なら誰もが一目置くあのメゾンもつかっています。
「いい革がつくれる条件が揃わなければつくらない」というんだからすごいでしょ。しかも家族経営だからほんとうに数があがらないんですが、交渉に交渉を重ねてようやく買いつけることができました。
ボックスカーフはとにかく肌理が細く、どこまでもしなやかです。おかげでビギナーが鏡面磨きにトライしても見事に光ります。たっぷりとオイルを含んだユタカーフも非の打ちどころがありません。
贅沢にもライニングもアース社のカーフ。もちもちしていて、吸いつくようです。かつての(デュ)プイに近い感動が味わえます。
隅々まで手を抜かない。それは三陽山長のこだわりです。
(CUSTOM ORDER部門の)九分仕立てのラインは伝説の靴職人、関信義さんにお願いしていましたが、関さんがうちの仕事を受けてくれるきっかけがプイのライニングでした。サンプルをおみせしたところ、「こんな上等なライニングをつかっているところはほかにはない。面白れぇじゃねぇか」って。
いい素材は長持ちします。当時の靴がいまなお現役ですが、プイのそれは多少スレた程度でまったく問題ありません。
ソールはマルティン社のオークバーグベンズ。有名どころがことごとくつかうドイツのタンナーで、創業は1645年。
マルティン社のソールは驚くほど硬く、耐久性に富む。焼印が入れられないんだから推して知るべしでしょう。おかげで謹製のロゴは箔押しです(笑)。繊維が密だから、コバの断面も驚くほどきれいです。ボソボソしないんですね。
硬くても返りがいいから履き下ろしから軽やかだし、硬いアウトソールにありがちな先減りの心配も無用です。秘密は、フレキシブルグッドイヤーウェルト製法。