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LIFESTYLE 女たちの事件簿

【後編】虐待から逃げた15の夜。全てを失った私に、全てをくれた人

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インターホンが鳴って扉を開けると綺麗なお姉さんが立っていた。その人は無遠慮に志帆を見て「まさか彼女?」と笑いながらも泣いているように見えた。剛がかつて結婚を約束した人だった。

かつて二人は不倫関係にあり、最後は剛が捨てられたのだ。最近夫とようやく離婚が成立して剛に連絡したが、返事がないため突然やってきたという。

「だからお兄さんは、あんなに寂しそうに見えたんだ」

志帆は剛と出会った頃を思い出していた。

 

「帰って。今、この子と付き合っている」

剛はそう言いながらも、酷く困惑した顔だ。

「この人をずっと待っていたんだね……」

剛の表情を見てそう感じた。志帆は努めて明るく振る舞い「私は自宅に帰りますから二人でゆっくり話をしてください」と、自分のアパートに戻った。

 

その後、剛から何度も戻るよう言われたが戻れなかった。戻ってはいけない気がした。

志帆の意思が変わらないことを知った剛は灯油の入ったポリタンクを手渡しながら「車も持っていっていいから」と言ったが貰えるわけがない。少しずつ荷物を運び出し、引っ越しが終わると駐車場に車を戻し、鍵をポストに落とした。

©Getty Images

その約1年後、剛のアパートがあった場所が更地になっていた。



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