志帆は立ち尽くしてしばらく空を見つめた。
もう二度と会えないことを実感した。恋しくて恋しくて、体半分をもぎ取られるような経験を初めてした。志帆は溢れる涙を拭わず、声を出して泣いた。
あれから時が過ぎ、志帆は高卒認定を取得、今は働きながら国家資格を取るために勉強中だ。
人から見ればなんてことはない日常かもしれないが、未来を描ける自分をとても幸せに思える。
今なら剛の言葉の意味や行動がわかる。お金を貯めろと言ったことも。28歳までは結婚はしないと言った理由も。鳥取砂丘で剛が見せたかったものも。守られていたことも。本当に愛してくれていたことも。
©Getty Images
真っ暗闇の道を月のように照らしてくれたあの人は本当に存在していたのだろうか。神様だったのかもしれないとさえ思う。剛は人生を救ってくれた恩人だ。志帆の痛みを自分の痛みにして、孤独から連れ出してくれた人。
時々彼を思い出しては、どうか幸せであってほしいと願っている。
Text:女の事件簿調査チーム
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