80周年を迎えた、軍用車両に端を発す「Jeep(ジープ)」は日本で売れ行き好調だ。10年前に比べ、2020年は約13倍の販売台数を誇る。SUVで比べた場合、メルセデスベンツ、VWに次ぐ第三位の売れ行きだ。そんなJeepから、この冬に日本市場への投入が予定されているのが、ピックアップトラックの「Gladiator(グラディエーター)」。
「剣闘士」という意味を持つグラディエーターは、Jeep最強のオフローダー「ラングラー・アンリミテッド」をベースとするピックアップトラック。もちろん、悪路の走行性能は期待できるところではあるが、現在、Jeepジャパンのホームページ上では、最強仕様のルビコンのみが掲載されており、詳細な仕様や装備は未発表の状態だ。
Jeep初のピックアップトラックとなる「グラディエーター」。本稿ではその全貌に迫っていく。
■悪路走破性と野性的なスタイリングが魅力
グラディエーターの最強仕様である「ルビコン」。その名は、カリフォルニア州にある有名な悪路「ルビコントレイル」に由来する。岩肌がむき出しとなった道が続くルビコントレイルは、Jeepのオフロード性能を鍛える開発拠点でもあり、「どんなに荒れた道でも走破できる」、といった意味が込められているのだろう。
グラディエーターも、ラングラー・アンリミテッド同様に、ルーフやドアを簡単に脱着できる伝統のスタイルを継承し、オープンカーのような開放感を得ることできる。突然の雨や雪に降られても、エンジンスターターや音響システムなどの水に弱い電装品は、防水設計のため、故障を心配することもない。
プラットフォームは、アンリミテッドから引き継がれており、車両の後部が長い荷台に置き換えられている。ボディサイズは、5540×1895×1930(全長×全幅×全高[mm])と、アンリミテッドより、全長が670mm、ホイールベースも477mm延長された。
全長5メートルを優に超えるピックアップらしく、最大積載量はなんと約725kg。これはトヨタのピックアップトラック、ハイラックスの約500kgを大きく上回る数値だ。キャンプ道具や、4輪バギー、オフロードバイクなど、大きな荷物を余裕で積みこみ、移動先でさまざまなアクティビティを楽しむことができる。
ボディ底部には、トランスミッションやフューエルタンクなどに傷がつくのを防ぐスキッドプレートが装備され、サスペンションアームなどはやりすぎにも思えるほどの強度をもち、アプローチアングルは43.6度、デパーチャーアングルは26度で、最大渡河性能は水深約760mm。岩場や丸太などの大きな段差、そしてちょっとした川であっても、安心して走破することが可能。
しかしながら、小回りが苦手なアンリミテッド(最小回転半径6.2m)からさらに、前後のオーバーハングが拡張されているため、狭い場所での取り回しには相当気を遣うことになる。また、最低地上高280mmと、アンリミテッドよりも80mmも高められているのだが、グラディエーターにはサイドステップが装備されないため、乗り降りも一苦労するものと思われる。
このようにデメリットもないわけではないが、他のクルマにはないプロポーションと、悪路走破性のパフォーマンスは、グラディエーターだけが持つ大きなメリットだ。
■パワートレインはV6ディーゼルターボが採用か!?
北米仕様のグラディエーター・ルビコンには、最高出力284ps/最大トルク347Nm を発揮する3.6L V6ガソリン(8速ATもしくは6速MT)と、260ps/600Nmを発揮する最新型の3.0L V6エコディーゼルターボ(8速ATのみ)の2基がラインアップされている。後者は、価格が4000ドル(約45万円)も高い上級エンジンだ。
だが現在(2021年10月末)、JeepジャパンのHPによると、日本仕様のラングラー・アンリミテッドは、既に3.6L V6ガソリン仕様の受注を終了しており、今後は2.0L直4ターボ(272ps/400Nm)のみに絞って販売するとアナウンスされている。ちなみに3ドアショートボディ「ラングラーSport」は3.6L V6が受注生産で継続となる。
日本仕様では、おそらくV6ディーゼルターボ+8速ATとなるだろうが、価格や環境性能を考慮すると、2.0L直4ターボ+8速ATもなくはない。どちらのエンジンが採用されるかは、あと少し情報公開を待ちたいところだ。
ちなみに、最大けん引力は、自車両の重量(約2800kg)より大きい、約3500kg(7650ポンド)。水上バイクやボートはもちろん、キャンピングトレーラーやクルマといった重量物であっても、余裕をもって持ち運ぶことができる。
■Jeep最強の4駆システム「ロックトラック4×4」を搭載
グラディエーターには、Jeep最強の4WDシステム、「ロックトラックフルタイム4×4システム」が搭載される。ルビコンはさらに、副変速機のローギアードのギア比4:1という極低レンジを備え、スイッチ操作でデファレンシャルを後輪または前後輪ともロックする「トゥルロック」も装備する。前後輪両方ロック時には、駆動力を均等に分配可能だそう。タイヤはデザインも武闘派な17インチのマッドテレーンタイヤを装着する。
強烈なトラクションで路面をえぐるように進むことができるため、どんなぬかるんだ泥道や急こう配に直面しても、走破が可能なのがルビコンだ。
■まとめ
北米市場でのグラディエーター・ルビコンの価格は4万5170ドル、日本円にすると約515万円だが、日本仕様となると、おそらく約600万円は超えてくると思われる。
価格よりも、日本ではそのボディサイズの大きさがネックとなるが、Jeep伝統のデザインや積載性、悪路走破性など、何物にも代えがたい魅力を持っている。Jeepが好きで、アクティブに行動する方に、またひとつ魅力的な選択肢が増えた。登場が待ち遠しいモデルだ。
Text:MMM-Production,Tachibana Kazunori
Photo:JEEP
Edit:Takashi Ogiyama