ご存じの通り、自転車には、クルマやバイクと同様に「ルール」があります。もしルールを破って、事故を起こしてしまったら、場合によっては、多額の損害賠償を請求されることも。今回は、自転車にかかわる交通ルールと、やりがちな交通違反を3つ、ご紹介します。事故を起こしてしまったあと、取り締まりを受けたあと、「違反だとは知らなかった」といっても、通用しませんよ。
■まずこれだけは知っておいて!! 自転車の走行違反
交通規則では、自転車はリアカーや馬車などと同じ、「軽車両」に分類されます。運転免許は不要ですが、ルールを無視した運転をして、警察官による取り締まりを受けた場合には、罰金や罰則が発生します。さらには、自らの過失で事故を起こして、他人に損害を与えてしまった場合には、被害者への賠償義務も発生します。自転車といえども運転者には変わりありませんので、ルール順守は、とても大切なことなのです。
また、自動車と同じく、自転車も守らなければならない標識があります。例えば、車両進入禁止、車両通行止め、一時停止、一方通行などの標識には従わなければなりません。なかでも、「車両進入禁止」については、「自転車を除く」という補助標識がなければ自転車も対象となる、ということを知らない方が多くいるようです。「自転車は歩行者ではない」という認識をもつことが重要です。
信号無視、通行禁止違反、歩行者用道路における車両の義務違反(徐行しなかった)、遮断踏切立入り、酒酔い運転、無灯火、二人乗り、歩道の通行、最近ニュースにもなった妨害運転など、こうした危険行為を反復し、交通の危険を生じさせるおそれがあると認めるときは、「自転車運転者講習」の受講が義務付けされています。
そして、上記のような違反行為を、3年以内に2回以上行った自転車運転者に対しては、各都道府県の公安委員会から自転車運転者講習の受講命令が発せられます。講習時間3時間、講習手数料は6000円ほどかかります。この受講命令に違反した場合は、5万円以下の罰金となります。
■原則、歩道の走行は不可
冒頭に書いた通り、自転車は「軽車両」ですので、基本的には、自転車は歩道の走行は不可、車道の左側を走る必要があります。ただし、歩道ではなく路側帯がある場合は、自転車もその路側帯を走ることができます。ただし、歩行者の妨害をしてはなりません。しかし、白線が2本引いてある路側帯は歩行者専用ですので、自転車は通行不可です。このようなルールを無視して走る自転車は、全て交通違反ということになります。
ただし、次のような場合は、例外として、歩道を走ることが許可されています。
①「自転車および歩行者専用」の標識がある場合
②車道に停車中のクルマがいたり、道路工事中などで、自転車道の走行が危険となる場合
③13歳未満と70歳以上、身体が不自由な人が運転している場合
また、「自転車道」や「普通自転車専用通行帯」のように、通行区分が指示されている場合は、自転車はその部分を走る必要があります。区分がない場合は、車道側を徐行しながら走ることになります。
「自転車道」では、自転車同士がすれ違う場合は、お互いを右に見ながら走行します。ただし、自転車道でも、自転車の「一方通行」を示す標識が設置されている場所では、標識の矢印で示された方向にのみ通行ができます。
「普通自転車専用通行帯」では、自転車は進行方向の左側の専用通行帯しか走行できません。「自転車道」と似ていますが、対面走行のルールが異なります。普通自転車専用通行帯での逆走は危険であり、交通違反となりますので、警察による取り締まりの対象となります。
■損害賠償請求が、数千万円にもなった自転車事故の事例も
交通事故全体において、自転車が関係する事故割合は約2割(約8万6000件、平成30年警察庁まとめ)と、相当数の事故が起きています。神奈川県警のホームページには、自転車が起こした事故によって、とんでもない金額の損害補償請求が発生した事例が記載されています。
事例1「夜間、無灯火の自転車を運転していた高校生のAさんが、携帯電話に気を取られ、前を歩いていた女性に背後から衝突。女性は歩行困難となる重傷を負った。Aさんの賠償金額は約5000万円(平成17年横浜地裁判決)」
事例2「自転車で坂道を下っていた小学校5年生が、前方不注意で高齢歩行者と衝突し、脳に重い障害を負わせて寝たきりの状態とさせた。児童に十分な指導・注意をしていたとはいえないとし、裁判所は、保護者の監督義務違反を認めた。保護者の賠償金額約9500万円(平成25年神戸地裁判決)」(※神奈川県警のホームページより引用)
ちなみに、神奈川県では条例によって、自転車損害賠償責任保険等への加入が義務付けられています。自転車購入時に加入を勧められる「TSマーク」には、1年間有効の賠償責任保険、傷害保険、被害者見舞金(赤マークのみ)が付いています。事故が起きてしまってからでは遅いのが「保険加入」。必ず入るようにしましょう。
今回は、特に覚えておいてほしい基本ルールだけに絞りました。さらに詳しい内容は、警視庁や警察署のホームページなどで確認ができます。今回ご紹介した内容で「知らなかった」というものがあったかたは、ぜひそちらも確認してください。
Text:Kenichi Yoshikawa
Edit:Takashi Ogiyama
Photo:Getty Images,AC,Kanagawa Police