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LIFESTYLE 洋食天国

浅草で三代続く【ぱいち】のビーフシチューとメンチカツには下町っ子の想いがつまっていた

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料理芸人のクック井上。による、“飲食店は開店してから、2年以内に半数が閉店に追い込まれる”というデータがある中、何十年もの間、お客に愛され続けてきた洋食屋さんを巡り、その想い、歴史、人、町を知る連載コラムです。

絶滅危惧種「町の洋食」を救え!

料理芸人のクック井上。です!
飲食店は開店してから、2年以内に半数が閉店に追い込まれる”
というデータがある中、町には何十年もの間、お客に愛され続けてきた洋食屋さんがあります。

そんな老舗の洋食屋を巡り、その想い、歴史、人、町に触れる連載コラム【洋食天国】

vol.5は、浅草『ぱいち』にやって参りました。

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外観は、かなり和風。小料理屋のような雰囲気さえ漂います。こちら、哀川翔さんやテリー伊藤さんもご常連だとか。

早速暖簾をくぐると致しましょう。

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どどーんと目に飛び込んできたのは、建物in建物。洋食屋さんの建物の中に、和風の建物がある感じです。

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店内に飾られているもの、全てが下町・浅草らしい。

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お祭りの街・浅草らしい、提灯の数々。

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今年は行われませんでしたが、毎年大盛り上がりの三社祭の写真も飾られていて、らしさ満載です。
さて、今回は『ぱいち』の名物「ビーフシチュー」をオーダーしました。

ここからは当コラムの名物になりつつある、‟厨房におじゃまします!”のコーナー。
有り難くも調理風景を拝見させて頂きます。

作って下さるのは、三代目店主・笹川勇二さんです。

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シチューの具材は、それぞれ最適な煮込み時間が違う為、別々で煮込まれており、調理の直前で合わせます。

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具材は、見るからに旨味の塊の、ベースとなるソースが加えられ煮込まれます。

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時代に合わせて、ソーシャルディスタンスを保ちつつ、厨房にお邪魔させて頂いております。

はぁー、鼻をくすぐるいい香り。そろそろ完成なようなので、席に着くとしましょう。

ワクワク…ドキドキ…、ビーフシチュー到着!

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趣深い和風の鉄鍋でアツアツ!

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食べるのも、和風にお箸です。

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 ビーフは、お箸でつかんでも崩れず、しかし見るからに柔らかく煮込まれた、絶妙な状態。一度、小さい器に取り分けていただきます。

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口に入れると、何とも贅沢な存在感。噛みごたえも残しつつ、しかしベルベットのような舌触り。

そして特筆すべきは、ドロっとしておらず、スープのようにサラっとしたソース。とてもあっさりしていて上品なソースは、食べるというより“飲む”と表現するのがピッタリ。

しかし、奥深いコクが口いっぱいに広がるという……、これご飯といくべきかな? ビールかな?

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ひとまず、ビールいただきます!

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合う! 上品なビーフシチューを肴に、ビールで一杯、いや‟ぱいちー”はたまりません。でも、ご飯でも食べたいということで……。

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どうでしょうか、この絶景!

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それをスプーンですくって、ご飯と共に口に運ぶんだ瞬間に訪れる、幸せのひと時。このビーフシチューは、洋食であると同時に、完全なる和食。

お酒のお供としても素晴らしいけど、これぞお米が恋するビーフシチュー! お昼の贅沢ランチに、お酒のお供に、呑んだ〆に、1日中オールマイティー。全ての日本人の、ど真ん中な味だ!

さて、『ぱいち』は揚げ物も素晴らしいんです。まだビールが残っているので、ランチで出しているメニュー「メンチカツ&海老フライ」を特別に作っていただきました。

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これでもかと、メンチカツの種を捏ねる……、体力勝負だ。ハンバーグと同じ種に、パン粉を纏わせて揚げていきます。

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メンチカツと海老フライは、温度の違う鍋で揚げていきます。

そして、着皿。

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 ビーフシチューより粘度が高いデミグラスソースがかけられたメンチカツ。美しい流線型で今にも跳ね上がりそうな海老フライ。みんなのアイドルのナポリタン。丁寧にスライスされた千切りキャベツとパセリの森。

小躍りしつつ、お箸で食べやすいように包丁が入れられた、メンチカツから参りましょう。

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揚げ油のラードの薫りが鼻をくすぐり、口に入れると、“肉汁ジュワー”ではなく、お肉本来旨味が口いっぱいに広がります。
脂分が控え目の赤身を使用しているので、胸焼けすることなく食べることができます。

そう、ここにも和食としての洋食の品の良さが漂います。
そして、海老フライにつけるタルタルソースも抜かり無し。

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素材の味を殺さないために酸味が抑えられた、どこまでも優しい自家製マヨネーズを使用したタルタルソースを纏わせサクっ!
噛むと現れる、鼻腔全体に充満する海老のアロマ。

メンチカツと海老フライ、なんという強力ツートップ!
句点としてナポリタンに箸を延ばし、千切りキャベツを頬張る。

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余ったタルタルソースを纏わせた千切りキャベツは、箸休めと呼ぶには贅沢過ぎる。

ビールとの相性も最高。
これにご飯とお漬物、お味噌汁が付いたランチメニュー…、まさに洋食天国だ。

三代目店主に聞く、浅草の歴史と店名の由来とは?
満足感と幸福感に包まれつつ、ここからは三代目店主・笹川勇二さんに、お店の歴史や、継いだ想いなどをお伺いしたいと思います。

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── お店の成り立ちについて教えてください。
笹川勇二さん
 昔、じいちゃん(初代店主・笹川隆一さん)が一杯飲み屋をやっていて、お客さんが‟一杯(いっぱい)”をテレコにして ‟ぱいいち”と言ったのが、店名の始まり。洋食屋になったのが昭和11年(西暦1936年)なので、お店自体の創業は、もっと前の昭和初期だと思います。皆さん、‟創業っていつ?”とかって聞くんだけど、はっきりしないんだよね。

── 寄席の出番を終えた芸人さんが業界用語で「一杯行く?」を「ぱいいち行く?」と言ったんでしょうね。浅草らしいお話です。二代目のお父様について教えて下さい。
笹川勇二さん  親父(二代目店主・笹川勇さん)は‟経営者”でしたね。親父の頃は日本が一番良い時ですから、現場は従業員に任せて‟下町の旦那”という感じでした。着の身着のままタクシーを止めて、そのまま湯河原行っちゃうような人だったので、母は苦労したと思います。

── 昭和の下町のエピソードですね! 三代目はいつ、お店を継がれたんでしょうか?
笹川勇二さん
  27歳の時に『ぱいち』に入りました。それまでは、バンドやったりアメ横でジーンズ売ったりしていました。でも、そのままお店継がなかったら、浅草で肩身の狭い想いするでしょ。それで継ぎました(笑)。

── 浅草愛がきっかけだったんですね。
笹川勇二さん
  毎年、会社と喧嘩して三社祭の3日間は全部休んでましたからね! 27歳で『ぱいち』に入った時は、僕も最初は親父と同様‟経営者”になろうと思ってたんですが、『ぱいち』に入って1年ぐらいの時に、親父がガンになって、僕が31歳の時に亡くなりました。そこからは、‟経営者”もヘチマもないですよ。味を絶やさず守るためにバタバタで、そうしたら料理の道にどんどんハマっていって。抜けられなくなって、気が付けば27年。今年54歳です(笑)。

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── お店の味への愛ですね。昨年の4月、お店で変化があったとお聞きしました。
笹川勇二さん  暖簾に書いてある文字から、あえて‟洋食”を外して、「洋食 ぱいち」から「浅草 ぱいち」に変えたんですよ。昨年4月に、厨房を支えてくれた従業員が独立する事になり、私一人で調理する事になりました。それで、一人でもお客さんに対応できるようにするために、かなりメニューを絞ったんです。たぶん、お客さんの中には‟洋食屋なのに、メニューに○○がない”と思う人もいるでしょ? だったらという事で、‟洋食”という文字を外したんです。やってることやっていれば、何屋だっていいんですよ(笑)。

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── 中身に自信があればこそのお言葉ですね。他に変わった事はありますか?
笹川勇二さん  従業員が独立した後は、母・叔母・妻の3人がお店を支えてくれていますが、‟おつまみメニュー”が増えました。‟注文した洋食ができあがる前に、一杯飲みたいというお客さんの間が持つように……”と90歳近い母が作っています。張り合いもあるようです。

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── まさに、創業当時のように‟ぱいいち(一杯)飲みたい!”というお客さんに向けてのメニューですね! 今年の新型コロナの影響はいかがでしたでしょうか?
笹川勇二さん  もちろん大変は大変ですけど、仲見世のお土産屋なんかはもっと大変ですよ。飲食店は死ぬ気になれば、デリバリーやテイクアウトなど、工夫のしようがあります。まだまだ頑張ります! あっ、僕も親父が亡くなった歳にも近づいてきたんで、お祭りとか好きな事もどんどんやっていきますよ!

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色々なお話をお伺いしましたが、三代目・笹川勇二さんの江戸っ子らしい気っ風の良さが心地よく、最高でした。

新型コロナ影響は無い訳ないのに、自分の事より他人の方を思いやる優しさ、男らしさ……。浅草で生まれ、浅草で育ち、浅草に戻り、浅草を愛し続ける店主の心意気を見ました!

そして……
‟「家族経営」は古い!”なんて思われがちですが、ところがどっこい!
何かあった際に、力を合わせて乗り越えられる「家族経営」のお店の強さに気づかされました。それどころか、これからは「家族経営」が見直されるんじゃないかとさえ感じた、今回の取材ロケでした。

昭和11年から長年守ってきた洋食の味に加えて、昨年、前身の一杯飲み屋のようなメニューが増えた、浅草『ぱいち』。

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90歳近いお母様が作る‟ぱいいち”飲むときのおつまみは、まさにおふくろの味。

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しかし、ふと横に目をやると、三代目・笹川勇二さんの叔父が書いたという‟名物 ビーフシチュー”の看板。
暖簾から‟洋食”の文字をはずそうとも、その精神と味は昔のまま!

浅草『ぱいち』の、お箸で頂く洋食は、まさに“日本の洋食は和食”を体現したお店でした。

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三代目・笹川勇二さん、お忙しい中有難う御座いました。

皆さんにも、親子3代、4代で通いたくなるような‟思い出の洋食屋”があるのではないでしょうか? 日本人みんなの憧れの「洋食」という名の和食文化、まだまだ東京のあちらこちらに有りそうです。
巡って、その想いや歴史、人や町に触れたいと思います。

ぱいち
東京都台東区浅草1丁目15-1
☎03-3844-1363
営業時間 11:30~L.O.13:30、17:00~L.O.21:00
定休日 日曜

Text:Cook Inoue
Photo:Riki Kashiwabara
Edit:Takashi Ogiyama

クック井上。プロフィール
お笑いコンビ「ツインクル」のクック井上。です! 芸人でありながら、食のイベントMC・料理教室講師・食のプロデュース等も! ●フードコーディネーター●ホームパーティー検定●食育インストラクター●野菜ソムリエ●BBQインストラクター●アスリートフードマイスター●こども成育インストラクター●パエリア検定 など食に関する資格も多々あり。
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