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「飛び込んだ先に見た世界」ハリウッド俳優 窪塚洋介が語る【沈黙の真実】

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俺に起こったことは全て必然、そして”今が一番いい”といつも思ってる

窪塚: 俺はいわゆる日本人なら御多分に漏れずという感じの…薄口の仏教徒。でもなんだかんだお墓参りをしたり、法事とかがあるとお寺に行っていたわけだから、そういう意味では仏教徒。
日本は宗教の呪縛的なものが他の国に比べたら少ないと思うんですよね。そう考えると日本人にとって「沈黙‐サイレンス‐」が伝えている、「みんなの中に神様はいる」というものを捉えやすい。

さらに言うと、神社つまり神道は「八百万の神」だから。これも神様、あれも神様…空気や物さえも全部神様っていう考え方でしょ。だからそういう意味では「自分の中に神がいる」ということを理解する土壌はちゃんと耕されているわけで。今、「沈黙‐サイレンス‐」の動員は50万人超で、これからどれくらいまで行くのか分からないけれど、皆が足を運んでくれている理由は、今話したようなこともあるんだと思う。

makiko: そうだね、無意識ながらも日本人にはそういう考えが染み付いていますよね。世界中色んな宗教があって、みんな何かしらに影響を受けているんだと思います。

私はもともとクリスチャンで育って、小さい頃から私にはクリスチャンの考え方以外なかった。お祈りが当たり前だと思っていて、お祈りをすれば救われると思っていたんです。でも、ある日どうしても叶えたい願いが出てきたときに、いつもに増して熱心にお祈りをしても、全然叶わなくて…そのとき、ふと「神様なんていないんじゃないか」って考えが頭をよぎって、それでお祈りをぱったりやめちゃったんです。そこから1~2年経ったときに気がついたのが、いつも心を暖かくしてくれていた“何か”、今考えると“心の拠り所”がなくなって空虚感が胸を支配しているのを感じたの。その時に気がついたのが「神様は道徳の規範であって、拠り所なんだって。私にとって神様とはそういうもんなんだな」って。

いろんな国に行って教会や寺院を訪れるのが好きなんですけど、どれもすごく飾りにお金を遣っていて、なんだか「お金をいっぱい寄付すれば何か善いことがある」っていう風潮を時折感じます。神様は決して拝金主義じゃないと思うのに、宗教自体は拝金や象徴主義っていうものに傾倒し、それって宗教を盾にした支配体制なんじゃないかと思うんです。どう思われます?

窪塚: 宗教って為政者が民を管理する最大で最強の武器だったと思います。けど、じゃぁただの為政者の為の道具だったのかっていうとそうじゃなくて、ちゃんとその宗教が救ってきた人々もいるし、彼らの心の拠り所にもなっていたはず。

俺は、信仰と宗教って違うと思っていて、信仰心って自分の心の中から湧いてくる自然な思い。例えば「ありがたいな」と思って自然と手を合わせていることだったりとか、仲間と見た朝日の神々しさだったりとか、一人で苦しんでいたあと、それが晴れていく時の神々しさだったりとか、晴れ渡る気持ちだったりとか、その時吹き抜ける風だったりとか…そういうことが信仰心の原点というか。よく言うけど原始宗教の最初の形ってやっぱり太陽信仰で、ひいては太陽の恵みで育つものに感謝するんだけど、その根源である「太陽を信仰する」というのは原始時代に最初に現れた心だと言われている。

もっと言っちゃうと、太陽信仰が後に色んな宗教に形を変えていったんですよね。例えばキリスト教ってミトラ教(古代ローマで隆盛した、太陽神ミトラスを主神とする密儀宗教)と類似点が多いとかね。聖書にある「キリストが死んで3日後に復活する」というのは、“冬至の太陽”の話なんだよね。冬至に太陽が一番力を弱めていて、3日間同じところに太陽が沈んで、その後復活していく。反対に太陽のパワーが一番ある時が夏至なんだよ。そこを太陽は行ったり来たりしてるの。
自分の家から毎朝昇る日の出や日没の位置を1年間観察してたら半端じゃなく動いていることに気がつくはずですよ。

話を戻すと、死後3日目に復活する…それは22日が冬至で25日がクリスマス、キリストが生まれた日でしょ。それは太陽のことなんですよ。

キリスト教は色んな宗教の良いところを集めたんです。キリストの死後、それが支配の為に使われてきたことは否定出来ない。でもさ、仏教にもありますよね、「悪い事したら地獄行くよとか」ね。六道(人間が善悪の業因によって行きめぐる六つの世界。地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上)っていうのがあるじゃないですか。それは救いでもあるし、牢屋でもあるって俺はそう思ってる。本当は自分の中に神がいて、自分と神とが対話できていれば…つまりそれぞれが天とつながっていることが当たり前になれば、宗教は必要ないと思う。

そういうのは正直思う。俺はそういうつもりで生きているし、それを卍LINEという音楽を通して歌ってきたつもりだし。全部の曲のリリックの根底にそういう考え方があって、「心にリリックが深く入れば入るほど、運命がより良い方向に変わる」ということを本当に信じ抜いてるし。そういう歌っていっぱいあると思うけど、卍LINE自身がそういうものとして存在してるから。

makiko: 全く同感。いつも洋介さんと対話していて、その造詣の深さに尊敬の念が湧くのですけれど、どうやってそういうことに気が付くに至ったんですか?

窪塚: 今日の取材の前に本屋に行ったんだけど、グラハム・ハンコックっていう人が、20年ぶりに本を出版してて、「うわ~」と思って。小学校高学年くらいの時に、なんか異様に本屋で気になった本があって、それが彼の著書「神々の指紋」という本で、ジャケ買いした本なんです。それから20年経って、今日見つけたのが「神々の魔術」で、彼の考え方は宇宙考古学っていう興味深いものなんですけどね、例えばエジプトのピラミッドが実は何万年前に出来ていたとか、ピラミッドの配置や、アンコールワットの配置など、それらは全て星を模写しているとか、もっと古代には遥かに進んだ文明があったとか…。

俺は当時そういうことを知って、その時点で「世の中が教えている歴史って、本当のことじゃないのかもな」って思い始めた。俺は小さい頃からこの地球もそうだし、宇宙の本当の姿を見たいとずっと思ってきた。そして宇宙は自分自身の中にあるっていうのは薄々直感していたというか…だから全部が正しくて、全部が間違ってる。今回のサイレンスの出演者もそうだと思うんだけど、全員正しくて全員間違ってる。それを見て自分がどう思うか。そこにしか答えはない。

だからよくインタビューで「沈黙ってタイトルですけど、神は沈黙してるけどどうですか」って聞かれてたんだけど、おれは神は沈黙してくれてよかったと思う。沈黙していて欲しいし。自分で“それ”を見つけるべきだと思うし。

俺らファミコン世代でさ、当時のゲームには攻略本みたいなのがあったじゃん。あれの「人生版の攻略本」みたいなのがあればいいのにと思ってて。実際それを自分の中で編纂してるんだ。今もそうだけど何度も何度も修正して加筆して…さ。 

色んな角度で物事を見ていたいと思うんですよね。コップだって下から見たら丸いけど、横から見たら長方形だし、斜めから見たら円柱に見えたりとかさ。例えばキリスト教をひとつとっても、民衆の目線で見たり、為政者の目線で見たり…宗教の捉え方も、「国を支配していく道具」と見たり、「人を救うもの」として見たり、「魂を入れる監獄」として見てみたり。

あらゆるものを色々な角度から見て、自分なりに出てきた答えを今歌ってる。それが自分の攻略本だし、俺はかなり良い精度でそれを作りあげてこれてるなって思うし、いつも「今が一番良い」と思ってる。無理やりそうやって思おうとしてるんじゃなくて、本当にあのとき怪我をして、本当の世界に落っこちたというよりも、むしろ“飛び込んだ”って感じ。そこからちゃんと自分の人生が始まって、そのあと卍LINEが現れてさ。

今すごい他人事みたいに話してるけど、客観的に見て、俺の人生に起こったことは全て必然で、それによって常に今が一番良い世界に生きられてる。きっかけは、体験はもちろん、歌や本、“誰か”だったりとか、あらゆる事象ですね。

>>後編につづく>>

編集makiko プロフィール
山本真紀子(やまもとまきこ)早稲田大学卒。某メガバンク総合職退職後、株式会社JunoJapan設立。アパレルブランドPR等ファッション関連ビジネスを経て、ライフスタイルマガジン「ADVENTURE KING」編集長(2012〜現在)。趣味ランニング、ヨガ、飲酒。旅とワインをこよなく愛する冒険野郎。


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