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BUSINESS ー SONY元異端社員の艶笑ノート

大事なことはみんな女が教えてくれた

SONY元異端社員の艶笑ノート「タダ」でさせてくれたゲーセンの熟女

2017.4.21
2017.4.21

アパート近くのひなびたゲーセン

任天堂のファミコンが我が世の春を謳歌している頃だった。その数年後に、まさかソニーからプレステなんてものが出るなどとは、任天堂はもちろんのこと、世間の誰も、露ほども思っていなかった頃であった。

街にはゲーセンがたくさんあった。
ぼくが住んでいた府中のボロアパートから徒歩1分のところにも、ゲームセンターが1軒あった。それがまた、今にも潰れそうな店だった。

潰れそうというのは、儲からなくて経営面が危ないという意味ではなく、建物が古くて、本当に倒れそうだったのだ。柱はボロボロだし、入り口脇に下りてきている樋の管は錆びて穴が開き、雨の日にはそこから雨水が噴き出し、辺りがびしょびしょになっていた。

自動ドアは建て付けが悪く、開け閉めするたびに、油が切れた自転車のチェーンのような音を出していた。エアコンもあるにはあったが、微妙な温度調節がきかず、夏は店全体が冷蔵庫のようにキンキンに冷え、冬は中東のように乾燥し、涙が蒸発してコンタクトが落ちるほどだった。

コメットさん風の熟女

初めて店に入ったのはトイレを借りるためだった。用を足し、トイレから出てくると、見知らぬ熟女に声をかけられた。

「ちゃんと手を洗った?」

誰なんだろうと思った。
トイレを済ませたら、さっさと店から出てくるつもりだったが、

「ちゃんと手を洗わなきゃダメよ。他の人に悪いから」
と、熟女はしつこい。

なぜか逆らわないほうがいいような気がして、言われた通りにしっかり洗い、ジーンズにこすりつけて手を拭くと、

「やっぱり男の子はそんなもんよね」

熟女は口をヘの字にした。

よく見ると、むかし大場久美子が演じていた「コメットさん」が年を取ったような人だった。彼女の腰には、いくつもの鍵がジャラジャラとぶら下がっていた。

熟女はゲーセンの店長だったのだ。

先ほど「手を洗え」なんて言ってきたのは、汚い手でゲームをされては困るからだとわかった。
店長と分かった以上、トイレを借りただけじゃ帰れないと思い、ぼくは一回だけゲームをすることにした。その店は一回50円だが、100円玉しか持ってなかったので両替しようとすると、彼女が話しかけてきた。

「どれやりたいの?」

「グラディウスをやりたい」

当時人気だったシューティングゲームで、得意だったので、せっかくやるならそれがいいと思ったのだ。

両替してもらおうと100円玉を差し出すと、

「お金はいいわよ」

どうしてだろうと思っていると、彼女は腰にぶら下げた鍵でゲームのテーブルの蓋を開け、スイッチをカチカチカチと押し、タダで遊べるよう、クレジットを入れてくれた。

「ほら。やんなさい」

こんなことしてもらっていいのだろうかと思いながらも、ぼくは腰を下ろしてゲームを始めた。
彼女は腕組みしてぼくを見下ろし、

「大学生?」

「うん」

「入学したばかりでしょ」

「何でわかるの?」

「だって田舎くさいから。近くに住んでるの?」

「すぐ裏のアパート」

「ああ……、パンチパーマんとこね」

隣室のヤクザさんは意外に有名なんだと思った。

「彼女はいるの?」

「いるわけないじゃないか。こっちに出て来たばかりなんだし」

「今度連れてきなさいよ」

「だから、いないって言ってるじゃないか」

「ふうん。でも女には気をつけなさいよ。顔だけにとらわれちゃダメよ。付き合うなら性格のいい子にしなさい」

初対面のぼくに向かって、彼女は最初からこんな話をしてきた。ゲームをしている(実際はトイレを借りにきた)だけなのに、何でそんなことまで言われなきゃならないのかとぼくは思った。クレジットを幾つも入れてくれたので、失敗してもまた次のゲームが遊べ、全然終わらない。彼女は、高そうな香水を漂わせながら、ぼくの隣に立って話しかけてきた。

この時、ぼくはすでにペット売場の多岐川裕美のことが好きだったが、夢はどうやら叶いそうにないことにも気づいていた。

ゲーセンの熟女はゲーム中のぼくにずっと話しかけてきた。うるさいなあと思ったが、ゲームをし終えた頃になると慣れてしまい、こんな女性も悪くないと思うようになっていた。

もしかすると、ぼくにはマゾっ気があったのかもしれない。アパートから徒歩1分ということもあり、たびたびゲーセンに顔を出すようになった。

彼女は毎日「タダ」でやらせてくれた

彼女は毎日「タダ」でやらせてくれた。

もちろんゲームの話である。

ぼくが行くと「お疲れぇ~」と、アンニュイな声で迎えてくれ、グラディウスの蓋を開け、タダでクレジットを入れてくれた。小遣い的にはありがたいが、ぼくは不安になった。

「こんなことして違法じゃないの?」

「大丈夫よ。私の店だもん」

「でも、お店、潰れないの?」

「他の人がたくさん使うから平気よ」

本当に大丈夫なのかと思ったが、店長がそう言うのだからそうなのだろう。

ぼくが行くと、彼女はいつも隣にきて話しかけてきた。ぼくがゲームをしている間、ずっと話していた。話しかけられると集中できず、失敗してしまうこともあるのだが、何しろタダでやらせてもらっているのだから文句は言えない。

「彼女できた?」

「まだできない」

「何よ、モテないのね~。好きな人はいないの?」

「いない」

まさか、ペット売場の多岐川裕美が好きだなんて言えない。もしかして知り合いかもしれないのだ。

「おかしいわね~。あなた、自分から声かけないでしょ?」

「どうしてわかるの?」

「わかるわよ~」

彼女は得意げな表情を浮かべ、

「私にさえ、手を出そうとしないからね」

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