「グラディウスをやりたい」
当時人気だったシューティングゲームで、得意だったので、せっかくやるならそれがいいと思ったのだ。
両替してもらおうと100円玉を差し出すと、
「お金はいいわよ」
どうしてだろうと思っていると、彼女は腰にぶら下げた鍵でゲームのテーブルの蓋を開け、スイッチをカチカチカチと押し、タダで遊べるよう、クレジットを入れてくれた。
「ほら。やんなさい」
こんなことしてもらっていいのだろうかと思いながらも、ぼくは腰を下ろしてゲームを始めた。
彼女は腕組みしてぼくを見下ろし、
「大学生?」
「うん」
「入学したばかりでしょ」
「何でわかるの?」
「だって田舎くさいから。近くに住んでるの?」
「すぐ裏のアパート」
「ああ……、パンチパーマんとこね」
隣室のヤクザさんは意外に有名なんだと思った。
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