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BUSINESS ー SONY元異端社員の艶笑ノート

大事なことはみんな女が教えてくれた

SONY元異端社員の艶笑ノート「タダ」でさせてくれたゲーセンの熟女

2017.4.21

 

通っているうちに、そんな彼女が魅力的に思えるようになってきた。サバサバしていたし、年上で何でもわかっている感じがしたし、何よりも色気というべきか、一緒にいるだけで彼女のこと以外を考えさせなくするような、こちらの気持ちを縛り付けるような威圧感があった。要するに、彼女の持つ雰囲気に飲み込まれてしまったのだ。

やはりぼくにはマゾっ気があったのかもしれない。

ただ、彼女には一つ疑問なことがあった。これほどの人がなぜ、ゲーセンの店長なんかやっているのかということだ。

ふと、ヤクザの女ではないか? と思った。

場所が場所だけに可能性はゼロではない。もし、そうだとすれば、下手なことはできない。後々大変なことになる。やはり素性は確かめておかなくてはいけない。

勇気を出して遠回しに聞くと、すでに結婚していて、旦那は不動産屋だと彼女は言った。

不動産屋と聞いて、これまた怪しいと思った。

ヤクザさんは、仕事を聞かれても、決してヤクザだとは答えない。当時はたいてい「ナントカ企画」とか「ナントカ興業」というような看板を出していたが、なかでも「ナントカ不動産」という名前は一番ポピュラーだった。不動産バブルの絶頂期で、価値の高い土地を持ち、古ぼけた家に住んでいようものなら、怖いおじさんがやってきて譲渡を要求され、断ると明け方にトラックが突っ込むなどして、結局引っ越しせざるを得なくなるといった事件が日本各地で起きていた時代だった。

彼女の旦那がそんな不動産屋じゃないことをぼくは祈ったが、本人が言うには、普通の不動産屋とのことだった。しかもゲーセンは、暇つぶしになればと、旦那がくれたと言っていた。
「だからこの店は私の好きにすればいいんだけど、本当は私が不動産会社をやったほうが儲かると思うのよ。旦那は要領悪いから」

本人が言うのだから、そういうことにしておけばいいと思った。

熟女に競馬の手ほどきをしてもらう

ある土曜日のことだった。真っ黒に日焼けしたおじさんたちが駅を出て、どこかにぞろぞろと歩いて行くので、何だろうと思って付いていくと、競馬場があった。まだ競馬などしたことがなく、珍しさもあって入ってみた。

ぼくが生まれた村は相当な田舎だが、それでもすでに馬を飼っている家はなくなっていた。それなのに、こんな大都会にたくさんの馬がいることが、ぼくには不思議でならなかった。

馬券の買い方さえ知らなかったが、周りの人に聞いたりしながら買ってみた。結果は全部外れたが、レースは迫力があって面白いと思った。
ゲーセンでその話をすると、

「競馬やったことないの?」

「うん。初めて」

「じゃあ、私が教えてあげる。明日行こう」

東京競馬場の正門前で待っていると、サングラスをかけ、体にピッタリの服を着た彼女が現れた。それまで地味な格好をしていたので気づかなかったが、スタイルの良さに感心した。多岐川裕美には負けるけど、彼女もなかなかいいじゃないかと思った。

「ギャンブルは流れに逆らっちゃいけないの」

彼女はいきなりそう話し、すでに終わったレースの出目を調べた。すると⑧枠が多く出ていることがわかった(当時、競馬は①枠から⑧枠までの8つの枠の組み合わせを買う馬券が主流だった)。

「今日は⑧枠から買うといいわ」

「わかった」

初心者で、どうすれば競馬が当たるかなんて知らないぼくは、彼女の言う通りにした。すると、彼女の言った⑧枠の馬が次々と先頭でゴールに飛び込んだ。

アパートに連れて来たのをヤクザさんに見つかる

「やった! また当たった」

ぼくは無邪気に彼女に抱きついた。競馬が当たったうれしさからだったが、彼女も「よし、よし」という感じでぼくを抱きしめてきた。

「ぼく、お礼したい」

「気を遣わなくていいわよ」

「いいから、いいから」

ぼくは彼女に焼肉をご馳走することにした。

「でも、お店、知ってるの?」

たしかに言われた通りだった。ぼくには目当ての焼肉屋がまだなかった。結局、店は彼女に連れていってもらった。

食べ終わると、
「ちょっとお店に寄るわ」
ゲーセンに取りに行くものを思い出したという。どのみち、ぼくのアパートと同じ方向なので、一緒に歩いてくる途中、こんな言葉が口を突いて出た。

「うちに猫がいるから、見に来ない?」

「猫なんて飼ってるの?」

「うん。かわいいよ。ラッキーっていうんだ」

アパートにきて、階段を上がって部屋に入ろうとすると、隣のおじさんがドアを開けた。おじさんは彼女を見て、「おっ」という顔をしたかと思うと、ぼくに向かって歯を見せてニヤリとし、部屋に消えた。

何と、一級建築士に合格

卒業後、ぼくは引っ越したが、府中で大きなレースがある時は、連絡して一緒に行ったりした。
ある日、彼女から電話がきた。

「一級建築士に合格したわよ」

「マジで!?」

「旦那の仕事を見ていたら、やっぱり自分でやりたくなったのよ」

「すごいなぁ~。そういえば、自分でやったほうが儲かるって言ってたよね」

「覚えてたんだ」

すでにアラフォーだったはずだが、一級建築士の資格を取ってしまうとは、やはり彼女はタダ者ではなかったのだ。ぼくは旦那をヤクザさんと心の中で決めつけていたが、彼女のいう通り、本当に不動産屋だったのかもしれない。疑っていて悪かったと今では思う。

Photo:Getty Images
Text:Masanari Matsui

松井政就(マツイ マサナリ)
作家。1966年、長野県に生まれる。中央大学法学部卒業後ソニーに入社。90年代前半から海外各地のカジノを巡る。2002年ソニー退社後、ビジネスアドバイザーなど務めながら、取材・執筆活動を行う。主な著書に「本物のカジノへ行こう!」(文藝春秋)「賭けに勝つ人嵌る人」(集英社)「ギャンブルにはビジネスの知恵が詰まっている」(講談社)。「カジノジャパン」にドキュメンタリー「神と呼ばれた男たち」を連載。「夕刊フジ」にコラム「競馬と国家と恋と嘘」「カジノ式競馬術」「カジノ情報局」を連載のほか、「オールアバウト」にて社会ニュース解説コラムを連載中

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